風間グランパスの終焉…独特すぎる攻撃偏重スタイルはなぜ大成しなかったのか?

カテゴリ:Jリーグ

今井雄一朗

2019年09月23日

風間スタイルは名古屋に何を残したのか?

風間監督が指揮を執った2年半で成長を見せた若手も多い。名古屋は今後、そうした人材を財産として活かせるだろうか。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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 しかし攻撃の圧倒とボール保持が担保となる偏重的なスタイルだけに、対策を敷かれると意外なほどの脆さを露呈する一面もあった。印象的だったのが5月26日のリーグ13節、それまで無敗・無失点を誇っていたホーム豊田スタジアムで行なわれた松本戦で、田中隼磨が「これしかなかった」と苦笑いした徹底防戦の前に攻めあぐね、ボール保持を強力な対人守備で阻害され、カウンター一発に沈んだ。前々からリトリートとカウンターには苦手なところがあった風間監督の名古屋だったが、これで一気に“ネタバレ”した感が強まり、以降はほぼすべての相手に真っ向勝負を仕掛けてもらえず、勝点をことごとく落としてきている。

 唯一、正面からぶつかってきてくれた川崎にはリーグのホームゲームで3-0の勝利を収めたが、直後のルヴァンカップ準々決勝ではついに同類にまで相手をされなくなり、ロングボール戦術の前に屈した。以降はその名古屋がジョーの高さを頼るロングボール戦術を解禁しており、もはや攻守一体の攻撃的スタイルは徹底するものではなくなってきているのが現状だ。今回の解任劇はそれでも練習では従来のスタイル維持のためのトレーニングを続ける監督と現場との乖離を、クラブが見かねてのものと捉えることもできるだろう。

 賽は投げられた。ではこの2年半、確固たる哲学のもとで積み重ねられてきたはずの“風間スタイル”の遺産は残されているのだろうか。いくつかの点においてそれは認められる。まずは成長を遂げた選手たちの存在だ。その筆頭は今季の主力を張る和泉竜司や宮原和也である。奇しくも両選手ともに風間監督によって複数のポジションで起用され、常に及第点以上のパフォーマンスで期待に応えてきたポリバレントである。
 

 和泉は、大学時代は勝負強いアタッカーとして名を馳せたが、サイドハーフやボランチ、SBから果ては3バックまでこなす万能ぶりを発揮し、かえって彼の持つ「ボールキープ力」と「ボールを運ぶ力」が際立った。宮原は、広島時代はボランチや3バックの一角としてプレーする守備のポリバレントだったが、SB起用でそのスピードと守備センスが引き出され、前述したように最近ではゴール前での仕事もできるようになった。

 名古屋の若手全員がというわけではないが、彼らのような若い主力を生み出せたことは、バトンを引き継がれたチームにとっても、心強いところだとは思う。また個人戦術を重視したトレーニングメニューは大なり小なりの技術的成長を選手全員に促したところがあり、ハイレベルな選手をかき集めてきたこの2年間でチームに加わった丸山祐市や米本拓司、吉田豊といった選手は偶然にも新指揮官と戦った経験があるというメリットをも提供してくれることになった。
 
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