この日、宮市は勝利に貢献した一員だった
終盤になってもザンクト・パウリの運動量、集中力は衰えず、カウンターからさ攻撃を仕掛けていく。追い詰められたハンブルクは反撃の糸口を見つけることができないまま、地に伏した。ザンクト・パウリにとって59年ぶりという歴史的な勝利が、現実のものとなった瞬間だった。
試合後に勝利を手にしたヨス・ルフカイ監督は「センセーショナルだ。ファンが本当に素晴らしいサポートをしてくれ、そして選手がそれに応えた。ダービーで勝ち点3を手にしたんだ!」とチームの健闘を興奮ぎみに褒め称えた。
当時20歳だった青年が79歳になるだけの時間。なかにはこの時を迎えることができないままのファンもいたかもしれない。試合後、ザンクト・パウリの熱狂的なファンは発炎筒を煌々と燃やしていたが、スタジアムを埋め尽くしたファンの気持ちはそれよりも熱く、熱く燃えあがっていたことだろう。
そして、ファンの歓喜の歌を聞くグラウンドには、笑顔で仲間と喜び合う宮市亮の姿があった。
試合後に勝利を手にしたヨス・ルフカイ監督は「センセーショナルだ。ファンが本当に素晴らしいサポートをしてくれ、そして選手がそれに応えた。ダービーで勝ち点3を手にしたんだ!」とチームの健闘を興奮ぎみに褒め称えた。
当時20歳だった青年が79歳になるだけの時間。なかにはこの時を迎えることができないままのファンもいたかもしれない。試合後、ザンクト・パウリの熱狂的なファンは発炎筒を煌々と燃やしていたが、スタジアムを埋め尽くしたファンの気持ちはそれよりも熱く、熱く燃えあがっていたことだろう。
そして、ファンの歓喜の歌を聞くグラウンドには、笑顔で仲間と喜び合う宮市亮の姿があった。
宮市はこの試合で、右ウィングの位置でフル出場。スピードを生かした突破で攻撃にアクセントを加え、守備では何度もダッシュで自陣深くまで戻り、相手の攻撃を抑え込んだ。CKのチャンスにはニアポストに飛び込みボールの軌道を変え、惜しいシーンも演出した。
長く負傷に悩まされていた宮市だが、昨季に本格復帰し、今年3月にクラブとの契約を2021年まで延長したと発表。スポーツディレクターのウーベ・シュテーファーは、「リョウが難しい時間を過ごしているときも、負傷が癒えた後も、彼はまだまだポテンシャルがあることを見せてくれた。それを呼び起こすための手助けをしていくつもり」と絶大な信頼を寄せ、宮市も「クラブとサポーターは僕が苦しい時期にいつもサポートしてくれました」と感謝を述べていた。
レンタル移籍を繰り返していた男がやっと見つけた”ふるさと”。相思相愛となったクラブが最大のライバルと対戦するダービーで、宮市が燃えないわけがない。
監督のルフカイにとっても、宮市は非常に価値の高い選手となっている。
今季は本職のウィングだけではなく、右SBの位置でも起用されている。最初はさすがに驚きがあったようだ。「今まで一度もプレーしたことがないポジションですから。最初の数日は手探りでやっていました」と地元紙に明かしていた。
慣れないポジションとはいえ、ルフカイは「リョウはフレキシブルに起用することができる。彼のスピードを生かして、前線へのギアを入れることができる」と高く評価。
宮市も「僕にとってポジションは問題ではないです。どこで出ても、どんな試合でも全力でプレーするだけ」とポジティブに捉えていた。どんなときでも前向き。それが、宮市の持つ何よりの強みだろう。
のびやかで、しなやかで、強靭なプレー。自分のために、クラブのために、そしてファンのために。懸命に走り続ける姿は美しい。そして、やはり宮市には笑顔のほうが良く似合う。
筆者プロフィール/中野吉之伴(なかのきちのすけ)
ドイツサッカー協会公認A級ライセンスを保持する現役育成指導者。執筆では現場での経験を生かした論理的分析が得意で、特に育成・グラスルーツサッカーのスペシャリスト。著書に「サッカー年代別トレーニングの教科書」「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする」。WEBマガジン「中野吉之伴 子どもと育つ」(https://www.targma.jp/kichi-maga/)を運営中。