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ジーコは怒っているのではなく――20冠達成の鹿島に、そのスピリットはいかにして浸透したのか?

カテゴリ:Jリーグ

加部 究

2018年11月13日

人口6万人台の小さな街のクラブがタイトル数で独走するのは世界でも例を見ない

四半世紀で20個目のタイトルを手にした鹿島。小さな街のクラブがタイトル数で独走するのは世界的にも稀だ。写真:徳原隆元

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 ジーコは世界最高峰のプロ選手であり、またストイックで合理的なプロ意識の持ち主だった。一方でまだ住友金属は文字通りのアマチュア集団で、この明確な師弟関係が絶妙な化学反応を導いた。逆に日本代表が不幸な結末に終わったのは、もともとの思いつき人事は言うまでもないが、ジーコの遠慮とプロとして成長した日本代表のプライドが邪魔した部分もあったかもしれない。鹿島では、ブレずに改革を主導する師の一言一句が、金言として伝播していった。また天賦の才を持ちながら、人一倍の努力を惜しまなかったジーコは、自らの眼力に適う本物の指導者や選手たちをブラジルから送り込んだ。そして格好の手本と接し続けたスタッフも、短期間でプロの仕事を実践し始める。こうして四半世紀で、基本指針も定まらずに右往左往する潜在的なビッグクラブに大差をつけてしまった。
 
 人口6万人台の茨城県鹿嶋市は、絵に描いたようなプロビンチャで、当然大都市のクラブに比べれば計り知れないハンディを背負っている。これだけ小さな街のクラブがタイトル数で独走するのは、世界でも例を見ない。
 
 視点を変えれば大都市クラブの未成熟を映し出すわけだが、それだけに関係者筋からの鹿島への信頼は絶大だ。
 
 最近では鈴木優麿、土居聖真らがアカデミーから育ってきたが、やはり最大の供給源は高校だった。小笠原満男、中田浩二、本山雅志らの世代から、熾烈な競合を制した柳沢敦、大迫勇也、柴崎岳、あるいは内田篤人、昌子源、植田直通まで「発掘→獲得→育成」の流れに、ほとんど失敗が見当たらない。
 
 鹿島には、ジーコが伝えた精神がクラブ全体に息づいている。トレーニングはもちろん、食事、休養、移動……、細部まで効率を追求し妥協を許さないプロフェッショナリズム。その土台の上で本物が育ち、さらに本物とは何かのデータも蓄積され、共有されていく。そういう流れを見ているから、選手本人はもちろん、その指導者たちも「鹿島なら大丈夫」と信頼を寄せる。この情報化時代に、高卒間もなくレギュラーを獲得し、U-19日本代表でも10番を背負う安部裕葵のようなシンデレラストーリーを発信できたのも、おそらくこうした土壌が築けていたからだ。
 
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