チームが順調な成長ぶりを見せていった一方で、西武台は高体連特有の問題にも直面した。それは、予選が始まるこの時期に、２年生は修学旅行、３年生は三者面談が行なわれるため、なかなかチーム全員で練習ができないというものだ。守屋監督も「選手たちはモチベーション的にやりづらい」と語るように、毎年この問題には頭を悩ませていた。
 
　そこで今年はチームをひとつにまとめたいという思いから、全員が揃って練習に参加できる、７時からの朝練を取り入れた。すると、DFの粕川智哉が「朝練をしたからには、絶対に勝ちたいと強く思うようになった」と語るように、指揮官の狙いどおりチームの団結力はいっそう強くなった。
 
　さらに、チームの団結力を強める出来事が県予選の序盤に起こった。それまで右SBの定位置を掴んでいたDF倉本秀人が負傷し、インターハイ本戦まで復帰が難しい状況となってしまったのだ。ここで、「倉本を全国大会に連れて行こう」（及川）という思いがチーム全体に芽生えた。
 
　倉本が抜けた穴は、本職ではないボランチのMF小川匠や、準決勝・市立浦和戦では「右SBはほとんどやったことがない」という粕川の起用など、チーム全体でカバーしたことが、さらに選手たちを結束させた。
 
「埼玉栄戦や成徳深谷戦、出場が懸かった準決勝でも相手に押し込まれましたが、自分たちが乱れることなく、地道な戦いぶりで結果を残せている」（守屋監督）
　こうした試合を全国でも続けるつもりだ。灼熱が予想される山梨の地でも、愚直なまでにチーム全体でボールに食らいついていくサッカーは、旋風を巻き起こす可能性を十分に秘めている。その走力と団結力にさらなる磨きを掛け、西武台が全国の舞台へ挑む。

取材・文：松尾祐希（フリーライター）

【2014南関東総体photo】埼玉・西武台