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【現地発】幸運だけに頼り続けた名門クラブの55年目の転落…ハンブルクの険しき前途と小さな希望

カテゴリ:連載・コラム

中野吉之伴

2018年05月16日

飛躍を遂げた伊藤らが再建のキーマンに

酒井は契約延長を明言し、伊藤は昨年12月に2021年までの契約を交わしたばかり。来シーズン、2人の日本人が1部復帰に向けて奮闘する姿を見ることができる!? (C) Getty Images

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 2部リーグに舞台を移す来シーズンは当然、1年での1部復帰が目標になる。だが、クラブには2部リーグでの経験がない。簡単な戦いではないのだ。降格クラブが1年で復帰する確率は、過去のリーグデータによると35パーセントほどである……。
 
 全ての選手が残るわけではなく、また現実問題として全ての選手を保持することはできない。人件費は、これまでの5500万ユーロ(約72億円)から3000万ユーロ(約39億円)に縮小される。
 
 高給取りのアーロン・ハント(年俸360万ユーロ=約4億7千万円)、ルイス・ホルトビー(350万ユーロ=約4億6千万円)、ニコライ・ミュラー(240万ユーロ=約3億1千万円)らが残留することは考えにくい。またドイツで再注目のタレント、FWのヤン=フィーテ・アルプは、降格時のバイエルン移籍が既定路線となっている。
 
 一方で、クラブへの忠誠を行動に表わしている選手も存在する。
 
 最終節の後、キャプテンの酒井高徳は「僕は契約を延長して、2部リーグでプレーする」と語り、チームに残ることを明言した。
 
 オランダ人CBのリック・ファン・ドロンヘレンも、地元紙『AD』に「今の段階で、このクラブから出ていくつもりはない。ここのファンを見てくれ。ハンブルグは、素晴らしいクラブなんだ」と、キャプテンに続いている。
 
 そして、主力に成長した伊藤達哉、マッティ・シュタインマンら若手が、クラブ再建のキーマンとなる。
 
 監督のクリスティアン・ティッツは契約を延長して、新しいチーム作りに乗り出す。クラブ育ちの選手を中心に、将来に希望が持てるチームを作り上げるのが、彼に課されたミッションだ。
 
 クラブは全てを失ったわけではない。降格を受け入れなければならない悲しみのなかでも、一部のファンが暴れ出すスキャンダルを目の当たりにしても、スタジアムに詰めかけたファンは、最後までチームとともに戦った。試合前には選手バスを大声援で迎え入れ、試合中はチームを鼓舞し続け、そして試合後には拍手で健闘を称えた。
 
 彼らファンのためにも、ハンブルクは今度こそ、再生への一歩を踏み出さなければならない。
 
文:中野 吉之伴
 
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日秋田生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。最近は日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。
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