いざ、38回目の選手権へ…名伯楽、小嶺忠敏のイズムと真髄(後編)

カテゴリ:高校・ユース・その他

川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

2017年12月25日

座右の銘? 色紙にはいつも“動!”と書いとるよ

平日は140人近いサッカー部員を、ふたりのコーチとともに指導する。その情熱は衰えを知らない。(C)SOCCER DIGEST

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 確固たる指導イズムがある。自他ともに認めるのは、まったくブレない根幹部分の盤石さだ。

 ダンプ監督の異名をとった30年前とは違い、ややほっそりした体形になった先生に、「座右の銘などはあるんですか?」と尋ねてみた。すると、なんとも深い話が聞けたのである。
 
 かつて週刊サッカーダイジェスト誌で『ジュニア倶楽部』という長期連載を持ち、育成年代のサッカーに精通していたのが、作家の大貫哲義さんだ。筆者も晩年にお世話になった恩人で、2007年に79歳で他界された。小嶺先生とは、先生が島原商で指導を始めた当初から親交があったという。
 
 そして92年に発刊された書籍が『動! 小嶺忠敏のサッカー熱い風』。小嶺監督は当初、この“動!”にいい印象を抱かなかった。自分はせわしなく動く、そういうタイプの人間ではないと。大貫さんに真意を問うと、まるで想像していなかった返答を得た。
 
「大貫さんは、あの高村光太郎さん(作家、歌人、彫刻家etc.)のお弟子さんだったんですね。亡くなる前に病室に呼ばれて、師匠がひとつの彫像を指さしたらしいんです。『おい大貫、その彫刻は動くか?』『動きません』『じゃあ横から、上から、後ろから見てみろ。形は一緒か?』。そう言われて感銘を受けたと。物自体は動かないけれども、自分が動くことによってまるで形は違って見える。コインにしてもそうでしょう。丸く見えるけど、角度によっては長方形に見える。で、大貫さんがこう言うわけだ。『あんたは島原商業の部員13人のところから始めて、自分でバスを運転して遠征した日本第1号の指導者だ。いろんな角度から自分を磨いてきた。だから本を書くなら、タイトルは“動”にすると決めていたんだ』。それを聞いて、思うところがあったね。あれからずっと、色紙にも“動!”と書いてますよ(笑)」
 
 見る角度や接し方を変えることで、子どもたちの良さを存分に引き出す。小嶺先生が無意識のうちに身に付けていた極意を、大貫さんはひとつの文字で端的に表現し切ったのだ。唸るしかないエピソードである。
 
「たまにこう言われるんだよね。『あの小嶺さんの“動!”という言葉はいいですね。やっぱりサッカーは動かなきゃいけないですからね』と。いやいや、違うんだけど、と言っても話が長くなるから、『そうですなー』と答えてる(笑)。そういう意味なんだと、ちゃんと書いといてもらえるかな?」
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