【コラム】3試合で8ゴール! ナポリの「俺様アタッカー」が大爆発中だ!

カテゴリ:ワールド

片野道郎

2016年12月23日

似ているのはメッシよりもC・ロナウドだろう。

インシーニェやハムシクなど優れたアシストマンたちが、メルテンスの得点力を引き出している。(C)Getty Images

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 170cmに満たない小柄な体格から、3トップでCFを務める時のリオネル・メッシと同じ「偽9番」という捉えられ方をすることもあるが、そのプレーはメッシのそれとはまったく異なる。
 
 中盤まで下がってきて組み立てに参加することもなければ、前線で動いて味方の攻め上がりにスペースを作り出すこともない。時にサイドに流れることはあっても、ほぼ常に最前線中央に位置して敵CBと駆け引きし、スペースよりは足下にパスを引き出してそれをフィニッシュしようとする。つまり単に体格が小さいというだけで、偽9番どころか生粋の9番のプレーである。
 
 そもそもメルテンスは、ポジションに関わらずチーム戦術の中で機能するタイプのプレーヤーではない。自らのクオリティーに圧倒的な自信を持ち、ボールを持ったらとにかく単独で状況を解決することを考える。優先順位が最も高い選択肢は常にシュート、次に選ぶのはリターンパスが返ってくることを前提としたワンツーによる突破という、極めてエゴイスティックなプレーヤーだ。
 
 全てのプレーが自らゴールを決めることにフォーカスされているという点において、そのプレースタイルとそれを支えるメンタリティーは、メッシどころか、体格的にはまったくタイプが異なるとはいえクリスチアーノ・ロナウドのそれとまったく同じと言っていい。徹頭徹尾「俺様」なアタッカーなのだ。
 
 小柄ながらゴール前の得点感覚に優れているところはセルヒオ・アグエロにも似ているが、メルテンスはそのアルゼンチン代表FWと違ってチームの戦術メカニズムの中で機能しようというメンタリティーに欠けている。強力かつ精度の高いシュート、高いテクニック、最初の2、3歩でマーカーをぶっちぎる圧倒的なクイックネスを備えながら、ナポリでもベルギー代表でも絶対的なレギュラーの座を確保できずにいたのは、まさにそれゆえだ。
 
 とはいえ、ベースのクオリティーはワールドクラスと言ってもいいレベルにあるだけに、こういうタイプは一度「当たる」と手がつけられない存在になることもまた事実。ここ3試合での8ゴールはまさにその証明だ。
 
 自ら奪ったPKを決めたトリノ戦の2点目を除く7ゴールは、いずれも最初からパスという選択肢をまったく持たず、ただシュートだけを狙って動き、ねじ込んだゴールばかりだ。敵2ライン(DFとMF)間でパスを受け反転して叩き込んだシュートあり、最終ラインとの駆け引きで裏に抜け出してスルーパスを引き出して流し込んだシュートあり、一瞬のフェイントでマーカーを外しスペースに走り込んでのワンタッチゴールあり、敵のトラップミスをかっさらってGKとの1対1ありと、得点パターンは実に多彩だ。
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