ブッフォン同様、状況に強い危機感を感じていたアッレグリ監督はジュゼッペ・マロッタGDと相談のうえ、3日後のトリノ・ダービー(11節)までミニ合宿を張った。そこで何が話し合われたかは外部には伝わっていない。確かなのは、そのトリノ戦も内容的にはパッとせず、時計が90分を回った時点では1-1の同点だったこと。そしてロスタイムにファン・ギジェルモ・クアドラードが劇的な決勝ゴールを決めて勝利をもたらし、そこから信じられない怒濤の追い上げが始まったということだ。
この11節から25節まで15連勝、その25節の直接対決で首位ナポリを下してトップの座を奪うと、続く26節のボローニャ戦こそ0-0の引き分けに終わったものの、そこからさらに9連勝。ダービー以降の25試合を24勝1分という恐るべきペースで駆け抜けて、半年前には誰も想像できなかった逆転優勝を実現した。気がついてみれば、首位陥落後にペースダウンした2位ナポリとの差は12ポイントにまで広がっていた。
ダービーでの劇的な勝利から始まった怒濤の連勝の背景には、もちろんピッチ上の技術・戦術的な要因が大きくかかわっている。
システムが3-5-2で固まり、マンジュキッチとディバラが2トップに定着して、本来のパフォーマンスを見せ始めたこと。序盤戦で故障欠場していたクラウディオ・マルキージオとケディラが復帰して、中盤のクオリティーが大幅に向上、それに伴いそれまで独力で違いを作り出そうと気負いばかりが目立っていたポール・ポグバも、チームのメカニズムの中でその超弩級のタレントを発揮し始めたこと。
そして、アンドレア・バルザーリ、レオナルド・ボヌッチ、ジョルジョ・キエッリーニという3バックが抜群の安定感で相手の攻撃を封じ込め、最後の最後ではブッフォンが38歳とは思えないスーパーセーブで何度も危機を救ったこと(後半戦ここまでの16試合で失点はわずか3である)。しかし、そのすべてのきっかけとなってシーズンの流れを変えたのが、サッスオーロ戦後のブッフォンの一喝だったのもまた確かだ。