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スパーズが警察に捜査を要求した「ラザニア事件」とは? 血生臭い恐怖のバトルも――ロンドンのダービーこそイングランド・フットボールの真髄だ【現地発】

カテゴリ:ワールド

ワールドサッカーダイジェスト編集部

2024年03月26日

ラザニアが原因の集団食中毒で…

ノースロンドンのライバル関係にスパイスを加えたのが
CBキャンベル(右)の禁断の移籍。スパーズ・ファンはいまも許していない。(C)Getty Images

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 ドッカーズ・ダービーのように剣呑ではないものの、激しさ、熱さで言えばノースロンドン・ダービーも負けてはいない。ロンドンへのフットボール観戦旅行を考えているなら、絶対に日程を合わせるべきだ。
 
 両チームのサポーターは、さまざまなギミックを編み出しては宿敵を貶めようとする。例えば、アーセナル側の「セント・トッテリンガムズ・デイ」だ。毎シーズン、スパーズがアーセナルより下の順位でシーズンを終えることが確定したその日をそう呼んで、グーナー(アーセナル・ファン)たちは悦に入る。
 
 このノースロンドンのライバル関係に強烈なスパイスが加わったのが2001年。スパーズからアーセナルへのCBソル・キャンベルの禁断の移籍だ。よりによって宿敵に鞍替えし、しかもアーセン・ヴェンゲル監督のもとで黄金時代の構築に大きく寄与することになったキャンベルを、スパーズ・ファンはいまも蛇蝎のごとく憎んでいる。未来永劫、許すことはないだろう。
 
 スパーズ・ファンにとって近年で最悪のノースロンドン・ダービーは、2003-04シーズンのそれだ。2-2で引き分け、目の前でアーセナルに優勝を決められてしまった屈辱のホームゲームだ。アーセナルはこのシーズン、無敗優勝の金字塔を打ち立て、スパーズ・ファンはさらに歯噛みをすることになった。
 
 ダービーマッチでのスパーズの屈辱は続く。10億ポンド(約1800億円)を投じた新スタジアム、トッテナム・ホットスパー・スタジアムで初黒星を喫したのはウェストハム戦だ。このイーストロンドンのクラブには、さらに苦汁を飲まされている。
 
 2005-06シーズンだ。宿敵アーセナルと熾烈なチャンピオンズリーグ(CL)出場権争いを繰り広げ、迎えた最終節がウェストハム戦だった。勝てば念願のCL初出場が決まる。
 
 事件が起こったのは試合の前夜。翌日はアウェーゲームで、そのために宿泊したホテルで夕食を取った後、選手が次々に体調不良を訴える。エドガー・ダービッツ、マイケル・キャリック、ジャーメイン・デフォーという主力中の主力が腹痛や吐き気に顔を歪める。何があったのか。ホテルで提供されたラザニアが原因の集団食中毒だった。
 
 翌日の試合に1-2で敗れ、アーセナルに4位の座を譲る悪夢の結末を迎えたスパーズは、何らかの陰謀を疑い、ダニエル・レビー会長は警察の捜査を要求したほどだ。この一件は「ラザニアゲート」と呼ばれ、スパーズとウェストハムとの間に遺恨を残している。
 
 チェルシーとのダービーマッチでもスパーズは苦杯を嘗めた。2015-16シーズンの36節だ。2点を先行しながら追いつかれ、貴重な勝点を取りこぼしたスパーズはここで優勝の可能性が潰えてしまった。他のビッグクラブが軒並み不調で、あの奇跡の優勝を成し遂げることになるレスター・シティを追走し、追い詰めていただけに悔やまれる“敗北”だった。
 
 エデン・アザールの美しい同点弾が記憶に残るこの「バトル・オブ・ザ・ブリッジ(スタンフォード・ブリッジの戦い)」は、スパーズにとってはまさに消し去りたい過去だ。プレミアリーグのワースト記録となる9枚のイエローカードを受け、2人の負傷退場者を出し、試合が終わってもチェルシーと大揉めに揉める醜態を晒したのだ。
 
 このときスパーズを率いていたマウリシオ・ポチェティーノがチェルシーの指揮官となり、ライバル関係に刺激を加える新たな火種となっている。
 
 近年、ロンドン・ダービーで存在感を高めているのがブレントフォードだ。ポッシュなチェルシーとフルアムとは毛色を異にするウェストロンドンの第三勢力は、昇格1年目の2021-22シーズンこそチェルシー、トッテナム、アーセナルに敗れて3敗を喫したものの、翌22-23シーズンは12試合のダービーマッチで5勝5分け2敗、今シーズンは13節のアーセナル戦(0-1)に敗れるまで3勝2分けと無敗だった。ライバルとの戦力差を考えれば大健闘だ。
 
 アンダーグラウンドを降りて通りを歩く。角を曲がる。と、そこには「ロンドン・ダービー」という心を震わすフットボールの物語がある。
 
文●ジャック・ロッサー
 
【著者プロフィール】
ジャック・ロッサー(Jack ROSSER)/『サン』紙のフットボール記者で、ロンドンを拠点に精力的な活動を続ける。『ロンドン・イブニング・スタンダード』紙で記者生活を始め、首都ロンドンのクラブにイングランド代表を担当。2022年から現職。

※『ワールドサッカーダイジェスト』2024年2月1日号より転載

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