レスターでは２ボランチの相棒エンゴロ・カンテが高い評価を受けている。だが、コンビは持ちつ持たれつの関係だ。
 
　１-０で勝利を収めた３月14日のニューカッスル戦、前半にカンテがドリブルに失敗した場面では、ドリンクウォーターが相手ＭＦに並走して自由を奪い、バックパスをさせていた。
 
　また後半、足を滑らせて自ら招いた被カウンターのシーンでは、必死の帰陣によって敵の攻撃をスピードダウンさせて帳尻を合わせてもいる。
 
　いずれもセンターハーフとしては当たり前のプレーながら、優勝のプレッシャーが増している状況下で、当たり前のように仕事をこなす姿は大したものだ。
 
　主将のウェイン・ルーニーをはじめ、代表のビッグトーナメントにおいてプレミアリーグで示すような力を発揮できないスリーライオンズ（イングランド代表の愛称）にとっては、貴重な「ミスター・リライアブル(常に頼れる男)」となりうるタレントだ。
 
　もっとも、本人は「レスターの一員」で満足の様子。マン・オブ・ザ・マッチ級の働きを披露したニューカッスル戦後のインタビューでは、「シンジ(岡崎)のハードワークが報われたゴール」、「カンテはサッカー少年の手本」などと、チームメイトの賞讃に忙しかった。まるでレスターでプレーできる喜びを語るように。
 
　30節を終えたプレミアリーグでわずか３敗しか喫していないレスターは、残る８試合で20ポイントを積み上げればクラブ史上初のリーグ優勝が確定する。そのチームで主力を担うドリンクウォーターは、今シーズンのマンチェスター・Ｕが希望を失い、EURO2016に臨むイングランド代表は期待すらされていない「タイトル獲得」の歓喜を、今まさに味わおうとしている。
 
文：山中忍
 
【著者プロフィール】
山中忍／1966年生まれ、青山学院大学卒。94年渡欧。イングランドのサッカー文化に魅せられ、ライター＆通訳・翻訳家として、プレミアリーグとイングランド代表から下部リーグとユースまで、本場のサッカーシーンを追う。西ロンドン在住で、ファンでもあるチェルシーの事情に明るい。