同僚批判、厳しい欧州への道、進まぬ株式譲渡…光は見えない。

本田を戦力外の状態から、現在のチームに不可欠な立場にまで引き上げたのは、彼の常に手を抜かない姿勢だった。それが今、ミランにとって大きな不安材料になっている。 (C) Alberto LINGRIA
5月21日のコッパ・イタリア決勝(対ユベントス)まで、ミランは時に、週3試合をこなさなければならない。選手たちに大きな負担がかかるのは明白であり、そこでプレーの精度が落ちることも大いにあり得る。
本田ともうひとりのサイドプレーヤー、ジャコモ・ボナベントゥーラを見れば、それはよく分かる。
両者ともターンオーバーに対応できる選手が他にいないため、毎回出ずっぱり。キャラも似ている。ふたりとも常にベストを尽くそうとし、チームを愛し、できるだけ皆の要求に応えようとするところがある。そのため、さすがにここ最近、疲労の色が隠せなくなってきている。
そして今のミランの問題は、全ての選手が彼らと同じではないということだ。
キエーボ戦の後、古株のイニャツィオ・アバーテとクリスティアン・アッビアーティが公の席で、かなり激しく何人かのチームメイトを批判した。具体的な名前は明かさなかったものの、話の内容からそれがアタッカーであることは明白だった。
つまり、ジェレミー・メネーズ、カルロス・バッカ、そしてマリオ・バロテッリ……これらの選手たちの何人かが(あるいは全員?)、ミランの選手として相応しい振る舞いをしていない、ミランのユニホームに愛着を感じていない、と断罪されたのだ。
こうした不協和音の根底に有るのは、ミランがチャンピオンズ・リーグ(CL)出場圏内の3位という目標をほぼ失い――あと9試合で11勝点差を埋めるのはまず不可能。おまけに3位のローマは好調ときている――、ヨーロッパリーグ(EL)に出場できる5位さえも簡単でない(インテルとは6勝点差)現状にある。
はっきり言ってしまうと、このままの調子でプレーし続ければ、EL最後の1席である6位――ユベントスがコッパ・イタリア優勝かつセリエA5位以内の場合、EL出場権が繰り下げで6位チームにも与えられる――、でさえも失う危険性が高い。
全ては未知数だ。加えて、クラブの48パーセントの株式譲渡は先行き不透明ときている……。今のところミランには、明るい兆しはなく、嫌な予感が漂っている。
ミランという船は、濃い霧のなかをレーダーもなく、ただ目視だけで航行しているようなものだ。シーズン後半になって見えてきた灯台の灯りも、今はまた見えなくなってしまっている。もちろんこの先、また光が差す可能性がないとは言えないが……。
ここにきてアドリアーノ・ガッリアーニ副会長は、来シーズンで契約が切れる選手に対して、契約更新か他チームへの売却かを本格的に検討し始めている。言うまでもなく、契約満了で一銭の移籍金も得られない状況を避けるためである。
これに該当するのは、キャプテンのリッカルド・モントリーボをはじめ、クリスティアン・サパタ、フィリップ・メクセス、アッビアーティ、アレックス、そして本田。もっとも、彼らの運命が決まる前に、まず監督の去就が明らかになる必要があることは言うまでもない。
文:マルコ・パソット(ガゼッタ・デッロ・スポルト紙)
翻訳:利根川晶子
【著者プロフィール】
Marco PASOTTO(マルコ・パソット)/1972年2月20日、トリノ生まれ。95年から『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙で執筆活動を始める。2002年から8年間ウディネーゼを追い、10年より番記者としてミランに密着。ミランとともにある人生を送っている。
本田ともうひとりのサイドプレーヤー、ジャコモ・ボナベントゥーラを見れば、それはよく分かる。
両者ともターンオーバーに対応できる選手が他にいないため、毎回出ずっぱり。キャラも似ている。ふたりとも常にベストを尽くそうとし、チームを愛し、できるだけ皆の要求に応えようとするところがある。そのため、さすがにここ最近、疲労の色が隠せなくなってきている。
そして今のミランの問題は、全ての選手が彼らと同じではないということだ。
キエーボ戦の後、古株のイニャツィオ・アバーテとクリスティアン・アッビアーティが公の席で、かなり激しく何人かのチームメイトを批判した。具体的な名前は明かさなかったものの、話の内容からそれがアタッカーであることは明白だった。
つまり、ジェレミー・メネーズ、カルロス・バッカ、そしてマリオ・バロテッリ……これらの選手たちの何人かが(あるいは全員?)、ミランの選手として相応しい振る舞いをしていない、ミランのユニホームに愛着を感じていない、と断罪されたのだ。
こうした不協和音の根底に有るのは、ミランがチャンピオンズ・リーグ(CL)出場圏内の3位という目標をほぼ失い――あと9試合で11勝点差を埋めるのはまず不可能。おまけに3位のローマは好調ときている――、ヨーロッパリーグ(EL)に出場できる5位さえも簡単でない(インテルとは6勝点差)現状にある。
はっきり言ってしまうと、このままの調子でプレーし続ければ、EL最後の1席である6位――ユベントスがコッパ・イタリア優勝かつセリエA5位以内の場合、EL出場権が繰り下げで6位チームにも与えられる――、でさえも失う危険性が高い。
全ては未知数だ。加えて、クラブの48パーセントの株式譲渡は先行き不透明ときている……。今のところミランには、明るい兆しはなく、嫌な予感が漂っている。
ミランという船は、濃い霧のなかをレーダーもなく、ただ目視だけで航行しているようなものだ。シーズン後半になって見えてきた灯台の灯りも、今はまた見えなくなってしまっている。もちろんこの先、また光が差す可能性がないとは言えないが……。
ここにきてアドリアーノ・ガッリアーニ副会長は、来シーズンで契約が切れる選手に対して、契約更新か他チームへの売却かを本格的に検討し始めている。言うまでもなく、契約満了で一銭の移籍金も得られない状況を避けるためである。
これに該当するのは、キャプテンのリッカルド・モントリーボをはじめ、クリスティアン・サパタ、フィリップ・メクセス、アッビアーティ、アレックス、そして本田。もっとも、彼らの運命が決まる前に、まず監督の去就が明らかになる必要があることは言うまでもない。
文:マルコ・パソット(ガゼッタ・デッロ・スポルト紙)
翻訳:利根川晶子
【著者プロフィール】
Marco PASOTTO(マルコ・パソット)/1972年2月20日、トリノ生まれ。95年から『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙で執筆活動を始める。2002年から8年間ウディネーゼを追い、10年より番記者としてミランに密着。ミランとともにある人生を送っている。