トッティがこのインタビューを受けたのは20日の正午過ぎ。ただ、その映像（１分半ほどのダイジェスト）がオンエアされたのは、その晩20時のニュース番組の中だった。それから１時間もしないうちに「トッティがRAIの独占インタビューで監督批判」という報道がネット上を飛び交い始めたのだ。
 
　皮肉にも、この日の13時過ぎ、トッティがトリゴリア（ローマのトレーニングセンター）のプールサイドで受けたインタビューが終わったか終わらないかという時に、同じ敷地内のプレスルームで実施されたパレルモ戦に向けた前日記者会見で、スパレッティ監督がこんなコメントをしていたところだった。
 
「トッティはこのところ調子が上がってきた。明日の試合ではおそらくスタメンで出場するだろう。彼はクオリティーという点で多大な貢献が果たせるプレーヤーだ。ただそのためには、チームメイトを必要とする。組織の中でプレーしなければならない。他の選手たちから離れ過ぎるのはまずい」
 
　マスコミを通じて世界に伝わったのは、このスパレッティのコメントのほうが早かった。実際、20時のニュースでトッティのインタビューが流れた後もなお、「明日のパレルモ戦ではトッティが先発」という予想は変わってはいなかった。
 
　状況が大きく変わったのが翌朝（試合当日）、インタビューの内容が新聞や他局のニュースで大きく報じられて、本格的な論争が巻き起こってからだ。
 
　前夜からのマスコミ報道を通じてトッティの発言内容を知ったスパレッティ監督は、試合に向けて前日から合宿中だったトリゴリアで、朝食後にトッティを監督室に呼んで事情聴取をした。そしてその結果、トッティを試合の招集メンバーから外すことを決断。それを受けたトッティは、トリゴリアを後にして一旦自宅に戻っている。
 
　昼過ぎには『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙のWEB版がこのニュースをスクープし、さらに夕方にはRAIがインタビューの完全版を放映して、この問題をめぐるマスコミの“火の手”はますます大きくなった。
 
　その日20時45分キックオフのパレルモ戦、トッティは試合前に姿を見せてロッカールームでチームメイトを激励すると、家族と友人のためにリザーブしているメインスタンドのVIPブースで、故障欠場したダニエレ・デ・ロッシと並んで試合を観戦した。
 
　クルバ・スッド（ゴール裏スタンド）を埋めたウルトラス（熱狂的サポーター）は、試合前のメンバー紹介の最後にスパレッティ監督の名前がアナウンスされると、嵐のようなブーイングの口笛を浴びせて、トッティに対する全面的な支持をはっきりと打ち出した。
 
　しかし、新聞のサイトが実施したリサーチや記事のコメント欄に寄せられたサポーターの意見は、決してトッティ支持一辺倒ではなく、その振舞いに対する批判の声も少なくなかった。