ナポリの8に対してユーベが87。この数字が示すものとは?
一方、首位に立ったユーベにとっても、向こう数週間のカレンダーは決して楽ではない。
今週こそミッドウィークに試合がなく週末のセリエAも10位ボローニャという格下(このところ好調であり油断は禁物)が相手とはいえ、そこからは2月23日にバイエルン(CL決勝トーナメント1回戦・第1レグ/ホーム)、28日にインテル(セリエA27節/ホーム)、3月2日にインテル(コッパ・イタリア準決勝・第2レグ/アウェー)、6日にアタランタ(セリエA28節/アウェー)、11日にサッスオーロ(セリエA29節/ホーム)、そして16日に再びバイエルンとの第2レグ(アウェー)と、厳しい連戦が続く。
CLのバイエルン戦は、フィジカル的にもメンタル的にも膨大なエネルギーが要求される、シーズンでもっとも難易度の高い試合になるのは確実だ。
しかもその間には深刻な不振に陥っているとはいえ戦力的には決して侮れない、いわば「手負いの虎」とも言うべきインテルとの連戦も組まれている。第1レグに3-0で勝利しているコッパ・イタリアは難易度が低いものの、展開によっては思わぬ消耗を強いられる可能性がある。
ユーベにとっても、CLの負担がスクデット争いの大きな足かせになるのは事実。その点だけから言えば、この段階で格上のバイエルンと当たったというのは、もし敗退したとしても(よほどの惨敗でない限り)前年の準優勝チームとしての名誉は守られ、しかもその後はカンピオナートに集中できるという意味で、ポジティブな巡り合わせになるのかもしれない。
絶対的な戦力値の高さ、15連勝中というチームの勢いなど、総合的に見ればスクデット争いにおいてユーベが有利な立場にあるのは間違いないように見える。
その中で気になる点があるとすれば、終盤戦を戦い抜くうえでのコンディション、とりわけ怪我人に関する側面だ。今シーズンの故障者の数やその頻度に関するデータを見ると、ユーベの数字はきわめて悪い。
開幕からの故障欠場者数は12人と、登録メンバーの約半分にも上っている。最近もサミ・ケディラ、マリオ・マンジュキッチ、ジョルジョ・キエッリーニといった主力の離脱が目立っており、そのいずれもが筋肉系の故障だ。
それに対してナポリはわずか3人。故障者の累積欠場試合数を比べても、ナポリの8に対してユーベが87と、圧倒的な違いがある。
現時点におけるチーム状況も万全とは言い難い。キエッリーニを欠いた前述のナポリ戦、マッシミリアーノ・アッレグリ監督は、おそらく控えCBのダニエレ・ルガーニに3バックの一角を任せるのは荷が重いと判断したのだろう。ここまでの躍進を支えてきた3-5-2システムを一旦棚上げして、最終ラインを4バックに切り替える(システムは4-4-2)という選択をせざるをえなかった。
指揮官はキエッリーニが復帰するまでの向こう数試合、このまま4バックで戦い続けるのか、それともルガーニをレギュラーに格上げして3-5-2にシステムを戻すのかという決断を強いられている。
15連勝に象徴されるここ3か月の躍進は、故障離脱していたアンドレア・バルザーリの復帰に合わせて最終ラインを4バックから3バックに変更して、ディフェンスが飛躍的に安定したことが大きな要因だった。
この重要な時期に余儀なくされた最終ラインの見直しが、ユーベのパフォーマンスにどんな影響をどれだけ及ぼすのかも、スクデット争いを左右する小さくない要因になるだろう。
文:片野道郎
【著者プロフィール】
片野道郎/1962年生まれ、仙台市出身。95年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させる。『ワールドサッカーダイジェスト』では、現役監督のロベルト・ロッシ氏とのコラボによる戦術解説や選手分析が好評を博している。
今週こそミッドウィークに試合がなく週末のセリエAも10位ボローニャという格下(このところ好調であり油断は禁物)が相手とはいえ、そこからは2月23日にバイエルン(CL決勝トーナメント1回戦・第1レグ/ホーム)、28日にインテル(セリエA27節/ホーム)、3月2日にインテル(コッパ・イタリア準決勝・第2レグ/アウェー)、6日にアタランタ(セリエA28節/アウェー)、11日にサッスオーロ(セリエA29節/ホーム)、そして16日に再びバイエルンとの第2レグ(アウェー)と、厳しい連戦が続く。
CLのバイエルン戦は、フィジカル的にもメンタル的にも膨大なエネルギーが要求される、シーズンでもっとも難易度の高い試合になるのは確実だ。
しかもその間には深刻な不振に陥っているとはいえ戦力的には決して侮れない、いわば「手負いの虎」とも言うべきインテルとの連戦も組まれている。第1レグに3-0で勝利しているコッパ・イタリアは難易度が低いものの、展開によっては思わぬ消耗を強いられる可能性がある。
ユーベにとっても、CLの負担がスクデット争いの大きな足かせになるのは事実。その点だけから言えば、この段階で格上のバイエルンと当たったというのは、もし敗退したとしても(よほどの惨敗でない限り)前年の準優勝チームとしての名誉は守られ、しかもその後はカンピオナートに集中できるという意味で、ポジティブな巡り合わせになるのかもしれない。
絶対的な戦力値の高さ、15連勝中というチームの勢いなど、総合的に見ればスクデット争いにおいてユーベが有利な立場にあるのは間違いないように見える。
その中で気になる点があるとすれば、終盤戦を戦い抜くうえでのコンディション、とりわけ怪我人に関する側面だ。今シーズンの故障者の数やその頻度に関するデータを見ると、ユーベの数字はきわめて悪い。
開幕からの故障欠場者数は12人と、登録メンバーの約半分にも上っている。最近もサミ・ケディラ、マリオ・マンジュキッチ、ジョルジョ・キエッリーニといった主力の離脱が目立っており、そのいずれもが筋肉系の故障だ。
それに対してナポリはわずか3人。故障者の累積欠場試合数を比べても、ナポリの8に対してユーベが87と、圧倒的な違いがある。
現時点におけるチーム状況も万全とは言い難い。キエッリーニを欠いた前述のナポリ戦、マッシミリアーノ・アッレグリ監督は、おそらく控えCBのダニエレ・ルガーニに3バックの一角を任せるのは荷が重いと判断したのだろう。ここまでの躍進を支えてきた3-5-2システムを一旦棚上げして、最終ラインを4バックに切り替える(システムは4-4-2)という選択をせざるをえなかった。
指揮官はキエッリーニが復帰するまでの向こう数試合、このまま4バックで戦い続けるのか、それともルガーニをレギュラーに格上げして3-5-2にシステムを戻すのかという決断を強いられている。
15連勝に象徴されるここ3か月の躍進は、故障離脱していたアンドレア・バルザーリの復帰に合わせて最終ラインを4バックから3バックに変更して、ディフェンスが飛躍的に安定したことが大きな要因だった。
この重要な時期に余儀なくされた最終ラインの見直しが、ユーベのパフォーマンスにどんな影響をどれだけ及ぼすのかも、スクデット争いを左右する小さくない要因になるだろう。
文:片野道郎
【著者プロフィール】
片野道郎/1962年生まれ、仙台市出身。95年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させる。『ワールドサッカーダイジェスト』では、現役監督のロベルト・ロッシ氏とのコラボによる戦術解説や選手分析が好評を博している。