カルロ・アンチェロッティを解任してラファエル・ベニテスを就任させた今夏の監督人事は、選手の意向に反してクラブ上層部だけで決められた。
アンチェロッティの解任会見でペレスが語った言葉を、わたしは忘れることができない。ある記者の「なぜ結果を残したアンチェロッティを解任するのか?」との問いに、会長はこう返した。
「正直それは、わたしにもはっきり分からない」
わたしは5月にこのコラムで、アンチェロッティの解任は不当だと述べたが、やはりそれは正しかった。事実、多くの選手が現在のクラブの体制に対して忠誠心を抱けずにいる。
指揮官の手腕にも実力差を感じた。アタッカー色の強い選手をたくさん並べただけのチームは、攻撃陣と守備陣が分断され、戦う気持ちを最後まで保てなかった。
ベンゼマとセルヒオ・ラモスという最前線と最終ラインの軸が、故障明けで100パーセントとは程遠いコンディションだったのは認めよう。彼らがもっと良い状態だったなら、あるいは、これほど悲惨な結果にはならなかったかもしれない。しかし、バルサがリオネル・メッシをベンチスタートさせたことを忘れてはならない。
マドリーはこれからどうするべきか。
ベニテスに味方がいない現状は、大きな問題だ。彼を支持する選手は限りなく少ない。ジョゼ・モウリーニョやアンチェロッティとは違い、ファンの人気もメディアのサポートもない。支持しているのは、みずから抜擢した指揮官のシーズン途中での解任だけは避けたいと望むペレスくらいだ。これではチームの再建もままならない。
もしベニテスが解任された場合、下部組織のディレクターを務めるビクトール・フェルナンデスに繋ぎ役としてシーズンの残りを任せ、来シーズンから現Bチーム監督のジネディーヌ・ジダンを昇格させる。そういうシナリオが囁かれている。だが、先のことは現段階では不透明だ。
いずれにせよ、マドリーには困難な道が待っている。もっとも、危機的状況が訪れたのが11月だったという点は不幸中の幸いだ。まだ取り返しがつく。リーガでの宿敵との勝点差は6ポイント。クラブ上層部はできるだけ早く何らかの決断を下さなければならない。
文:パブロ・ポロ(マルカ紙)
翻訳:豊福晋
【著者プロフィール】
Pablo POLO(パブロ・ポロ)/スペイン最大のスポーツ紙『マルカ』でレアル・マドリー番を務める敏腕記者。フランス語を操り、フランスやアフリカ系の選手とも親密な関係を築いている。アトレティコ番の経験もあり、首都の2大クラブに明るい。