【岩本輝雄の視点】“3秒で勝点3を稼ぐ男”俊輔は、直接FKのようにクロスを蹴る

カテゴリ:連載・コラム

岩本輝雄

2015年09月21日

時間にすればほんの2~3秒だけど、それだけあれば十分。

いくつかのミスが散見されたけど、一発のクロスで勝負を決めてしまう俊輔は、お金を払ってでも見たいと思わせる数少ないエンターテイナーだ。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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「あ、空いた」
 
 FC東京陣内でのマリノスのスローイン。下平が投げて、アデミウソン→下平→俊輔とダイレクトでつなぐ。
 
 俊輔が右足でトラップした瞬間、あれだけタイトなマークを見せていたFC東京の選手たちが寄せて来ない。その結果、俊輔がフリーの状態でほんの少しだけ前に進める時間とスペースができた。
 
 時間にすれば、ほんの2~3秒だったかもしれない。でも、はっきり言って、それだけあれば十分。僕も左利きで、現役時代は主に左サイドを主戦場にして、そこから数え切れないぐらいのクロスを上げてきた。ペナの角あたりで、同じようなシチュエーションになった時の感触は今でも分かる。「これはチャンスになる」と思った。
 
 言ってしまえば、一番クロスを合わせやすい場所でもある。しかも、ボールを持っているのは、日本で一番キックが上手いと言っても過言ではない俊輔だ。結果論だけど、そんな“おいしい場所”で、あれほどの名手を一瞬でも自由にさせてしまったのは、FC東京からすれば痛恨のミスだった。
 
 タッチライン際で、たしか俊輔の周りにはFC東京の選手が4~5人いたはず。半径2メートルぐらいのスペースで、相手に囲まれている。一見すれば不利な状況に見えるけど、利き足にボールを置いて、クロスを上げる態勢を取ってしまえば、こっちのもの。その後に慌てて後ろから来ても、もう遅い。
 
 案の定、俊輔のクロスから富樫がヘッドで押し込んだ。DFとDFの間に上手く入り込んだ富樫のポジショニングはもちろん良かった。だけど僕としては、俊輔のピンポイントのクロスに富樫が引き寄せられたという表現のほうがしっくりくるし、「ここに入ってこい!」という強いメッセージが込められたボールだったと思う。
 
 それだけ俊輔のクロスは完璧だった。手前にいるDFは見送ることしかできず、かといってGKも出られないスポット。そこに寸分の狂いなく、速いボールが入ってくる。ターゲットからすれば、まさに「あとは当てるだけ」という類のゴールだった。
 
 もっとも、この試合の俊輔はサイドチェンジやスルーパスを引っかけられてピンチを招くなど、らしくないミスが目に付いた。それでも、決定的な仕事をこなしてチームを勝利に導いてしまう。たった3秒で勝点3をもたらす――それが俊輔というプレーヤーであり、お金を払ってでも見たいと思わせる数少ないエンターテイナーでもある。
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