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【消えた逸材】賭け事やドラッグで歯車が狂い…エバートンでクラブ史上最年少デビューを飾った有望株の波乱万丈

カテゴリ:ワールドサッカーダイジェスト編集部

連載・コラム

2021年12月17日

大麻、コカイン、エクスタシーに手を出して逮捕。自殺さえも…

引退までの最後の1年、メンフィス時代のバクスター。(C)Getty Images

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 そして、ドラッグに手を出した。大麻、コカイン、エクスタシー。09年10月には販売目的での大麻所持で逮捕され、持ち物から偽札も見つかった。デビューからまだ1年ちょっと、17歳での不祥事だ。

 3部のトランメアへのレンタルを経て、12年の夏、20歳でエバートンを飛び出した。解雇ではなかった。2年間の契約更新のオファーを断ったのだ。トライアルという形でクリスタル・パレスのサマーキャンプに参加したが、契約は見送られた。ようやく見つけた再出発の場は3部のオールダム。この新天地では、39試合で13ゴールと格の違いを見せつけた。

 しかし、ドラッグを断ち切ることができなかった。オールダムから移籍したシェフィールド・ユナイテッドでの2年目のシーズンを終えようとしていた15年5月だ。薬物検査に引っかかった。コカインとエクスタシーだった。

 FA(イングランド・サッカー協会)から5か月間の出場停止処分が下り、その後、クラブからも謹慎を言い渡され、15-16シーズン終了とともに解雇された。出場停止期間中に精神のバランスを崩し、自殺も考えたという。それでも再起に向かうことができたのは、家族の支えがあったから。生まれたばかりの娘の存在がとくに大きかった。
 
 その才能を信じて、差し伸べる手もあった。セカンドチャンスを与えてくれたのは、エバートンのビル・ケンライト会長。その口利きで5年ぶりの古巣復帰が決まった。17-18シーズンだ。トップチームの試合には出られなかったが、U-23チームに所属して実戦復帰を果たした。

 現役最後のクラブとなったアメリカ2部のメンフィス901に誘ってくれたのは、デビュー当時のエバートンの守護神ティム・ハワードだった。元アメリカ代表のハワードは同クラブの共同オーナーで、現役を続けながらスポーツディレクターも務めていた。

 引退までの最後の1年、メンフィスでは誰よりも真剣にフットボールに向き合い、チームリーダーとして若い選手たちを導いた。そして、29歳のバクスターはフットボール人生に幕を引いた。感謝の言葉とともに。

文●松野敏史

※『ワールドサッカーダイジェスト』2021年11月18日号より転載
 
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