【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の二十六「相手に応じた準備」

カテゴリ:特集

小宮良之

2015年07月10日

154位の相手にしくじった試合を反省できなければ…。

ワールドカップ2次予選のシンガポール戦で、ハリルホジッチ監督は川又堅碁に代わって永井謙佑を招集した。しかし、これは論理的ではなかったとも言える。写真:SOCCER DIGEST

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 ポゼッションを守備に使う意図だったのだろうが、強襲を浴びる状況でのそれは、無策に近かった。実は同じような流れで、2006年ワールドカップのジーコもオーストラリアの猛攻を前に小野伸二を投入せざるを得ずに大敗しており……。
 
 サッカーの勝負で生き残るためには、相手の強さや状況によって順応できなければならない。日本は強豪国でないだけに、なおさらだろう。指揮官は多様性に対し、細やかに準備する力が問われる。
 
 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督はワールドカップ2次予選のシンガポール戦、川又堅碁に代わって永井謙佑を招集していたが、これは論理的ではない。確実に守備を固めてくるシンガポール戦で、永井投入の機会は考えられなかった。
 
人海戦術を予想していたら、有効なのは高さのあるストライカーとなる。サイドからのクロスに突っ込むだけで、陣形を撓められるし、得点機も生み出せる。
 
「成長」「強化」「スタイルの追求」
 
 それらはサッカーチームにとって、どれも無視できない。だが最も大事なことは、目の前の敵に1試合1試合勝つことである。代表であれ、クラブであれ、指揮官はそのための準備を怠りなくすることが仕事で、そのプロセスにおいて世代交代や独自の型を作るということが為されるべきだ。
 
「シンガポールに一度引き分けただけで、大騒ぎするべきではない」
 
 それは筋の通った意見に聞こえるが、154位(当時。最新ランキングでは150位)の相手にしくじった試合を反省できなければ、超強豪国、強豪国、中堅国が集まるワールドカップの本大会では、マネジメントの後手を踏んで終わりだろう。そもそもアジア予選も、簡単な道のりではない。
 
 
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。01年にバルセロナへ渡りライターに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写。近著に『おれは最後に笑う』(東邦出版)。
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