【消えた逸材】EURO2004で史上最年少ゴール! “スイスの天才”はなぜ伸び悩んだのか?

カテゴリ:連載・コラム

ワールドサッカーダイジェスト編集部

2021年05月28日

フランス戦で18歳141日でネットを揺らす

EURO2004で史上最年少ゴールを更新したフォンランテン。(C)Getty Images

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ヨハン・フォンランテン(FW/元スイス代表)
■生年月日/1986年2月1日
■身長・体重/177センチ・73キロ


 クリスチアーノ・ロナウド、ウェイン・ルーニーが鮮烈な“国際デビュー”を飾ったEURO2004で、彼らに負けないくらい強い印象を残したのがヨハン・フォンランテンだった。

 いわゆるサプライズ招集でスイス代表の23人枠に登録された18歳は、グループステージ第2戦のイングランド戦で大会史上2番目の若さとなる18歳137日で試合出場を果たすと、最終戦のフランス戦では18歳141日でネットを揺らし、EURO史上最年少ゴール記録を打ち立てた。

 この4日前にイングランドのルーニーが、他でもない自分たちとの試合でマークしたばかりの記録をあっさりと塗り替えてみせたのだ。左から右へゴール前を横切りながらスルーパスを呼び込み、右足で逆サイドへ流し込んだ。

 生まれはコロンビア。スイスに渡ったのは母親がスイス人の男性と再婚したからだった。名門ヤングボーイズで頭角を現わし、16歳でプロデビュー。17歳でPSVに引き抜かれ、そしてEUROで大記録樹立とサッカー人生は順風そのものだった。「世紀のタレント」と、スイスのメディアは騒ぎ立てた。 
 
 しかし、そうした注目や期待が焦りにつながった。常にピリピリと気負い立ち、ピッチ内外での振る舞いが独善的になっていった。当時PSVを率いていたフース・ヒディンク監督には「いずれお前の時代が来るから慌てるな」と何度も諭されたと、のちに振り返っている。

 親元を離れたオランダでの一人暮らしも10代の若者には精神的な重荷だった。焦燥感が掻き立てられ、しばしば直情的な行動を取らせた。スイスU-21代表ではこんなことがあった。先発予定の試合でキックオフ直前にスタメンを外されたことを知ると、ベンチ入りを拒否してひとりスタンドで不貞腐れた。

 怪我もあって出場機会が限られたPSVを離れ、ブレッシャ、NACへのレンタルを経て完全移籍したレッドブル・ザルツブルクでも、成功へとはやる気持ちが軋轢を生んだ。1年目からレギュラーとして優勝に貢献したが、毎試合のように途中交代でベンチに下げられる起用法に不満を募らせ、ジョバンニ・トラパットーニ、コ・アドリアーンセと歴代の監督と衝突し、チームから浮いていった。

 問題児のレッテルが貼られ、移籍を望んでも獲得に興味を示すビッグクラブは現われず、ステップアップのチャンスは事実上閉ざされてしまった。 
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