【識者コラム】東京五輪中止なら…日本サッカーのメリットとデメリットは?|先進国と発展途上国では五輪の価値基準に差が…
開幕までいよいよ2か月を切った東京オリンピック。新型コロナウイルスが世間を騒がせるなか、日々その開催の是非が論争を呼んでいる。仮に中止となった場合、日本サッカー界にはどういったメリットとデメリットがあるのだろうか。スポーツライターの加部究氏に見解を伺った。
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欧州や南米などの先進国と、それ以外のアジアやアフリカなどでは、五輪に対する価値基準が明らかに乖離している。欧州と南米は、ワールドカップ中間年に大陸選手権を開催する。大会は約1か月間に及び、長いシーズンの後に合宿を経て臨む各国代表選手たちは、ようやくこのワールドカップに匹敵する激闘を終えてオフに入る。そういう地域の人たちにすれば、五輪は「祭りの後」に残されたミニトーナメントのようなものだ。
五輪の男子サッカーは、何度もレギュレーションを変更してきた。IOCとFIFAの綱引きの産物である。最近はU-23選手権の体裁を整えていたが、そこにオーバーエイジ(OA)枠が加えられ、今度はコロナ禍で参加資格が引き上げられた。2014年にワールドカップを制したドイツ代表の平均年齢は24.8歳。もはや最後の年齢別選手権という定義さえも虚しい。
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欧州や南米などの先進国と、それ以外のアジアやアフリカなどでは、五輪に対する価値基準が明らかに乖離している。欧州と南米は、ワールドカップ中間年に大陸選手権を開催する。大会は約1か月間に及び、長いシーズンの後に合宿を経て臨む各国代表選手たちは、ようやくこのワールドカップに匹敵する激闘を終えてオフに入る。そういう地域の人たちにすれば、五輪は「祭りの後」に残されたミニトーナメントのようなものだ。
五輪の男子サッカーは、何度もレギュレーションを変更してきた。IOCとFIFAの綱引きの産物である。最近はU-23選手権の体裁を整えていたが、そこにオーバーエイジ(OA)枠が加えられ、今度はコロナ禍で参加資格が引き上げられた。2014年にワールドカップを制したドイツ代表の平均年齢は24.8歳。もはや最後の年齢別選手権という定義さえも虚しい。
だが発展途上国にとって五輪は、逆に手の届き易い標的だ。そもそも日本でサッカー人気が定着しつつあるのも、57年前に五輪を開催したおかげと言っても過言ではない。当時日本では、サッカー界に五輪以上のイベントがあることを認識していた人が本当に稀だった。それどころか、国際的にサッカー人気が野球を凌駕する常識さえ知られていなかった。五輪開催を控えて各新聞社が世界のスポーツ事情を取材するようになり、少しずつ地球規模のサッカー熱の凄さが伝わり始めたそうである。
そんな時に国内ではマイナー競技の日本代表が、世界的強豪のアルゼンチンを下した。メディアが「奇跡」と報じた理由である。そして東京大会の4年後に銅メダルを獲得したことで、この国にもかつてないブームが到来した。銅メダルを獲得した当事者たちは「まだまだ世界には自分たちより強いチームが無数にある」ことを知っていたが、ファンは日本代表がシーズンオフに来日する強豪チームに善戦するのを見て快哉を叫んでいた。
そんな時に国内ではマイナー競技の日本代表が、世界的強豪のアルゼンチンを下した。メディアが「奇跡」と報じた理由である。そして東京大会の4年後に銅メダルを獲得したことで、この国にもかつてないブームが到来した。銅メダルを獲得した当事者たちは「まだまだ世界には自分たちより強いチームが無数にある」ことを知っていたが、ファンは日本代表がシーズンオフに来日する強豪チームに善戦するのを見て快哉を叫んでいた。