【川崎】改めて示した強さの理由。リーグ新記録の11連勝達成に見えた“進化”の証

カテゴリ:Jリーグ

本田健介(サッカーダイジェスト)

2020年10月20日

守備も柔軟に

後半には中村(写真右)、ジェジエウのコンビネーションで2ゴールを挙げた川崎。名古屋を3-0で下し、リーグ新記録の11連勝を達成した。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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[J1第23節]川崎3-0名古屋/10月18日/等々力

 強い。

 新型コロナウイルスの影響によりイレギュラーなシーズンとはいえ、これほどこの言葉が似合うチームが、Jリーグに登場したのも久しぶりのことではないか。

 川崎が名古屋を下し、J1新記録となる11連勝を達成したゲーム。改めて今季の川崎の強さが象徴される試合となった。

 後半に点差が付いたとはいえ(前半終了間際に川崎が先制)、前半は両チームの特色が表われた非常に濃密な、観ている側は時間を忘れるような緊張感のある内容だった。

 川崎のスターティングメンバーで印象深かったのは、戦前にはジョーカーとしての起用が予想されたドリブラーの三笘薫、経験豊富なパサーの中村憲剛を、鬼木達監督がスタメン起用した点だ。

 試合2日前の取材で、名古屋戦のキーポイントを訊くと「やはり先制点」と話していた指揮官は、練習での好アピールも鑑み、序盤から一気に名古屋を責め崩す布陣を採用したのだろう。このゲームでは大島僚太、小林悠らが不在。さらに相手は堅守で知られる名古屋で、リーグ前半戦では0-1と唯一黒星を付けられた相手でもある。中盤から決定的なパスを出せる中村、そして個人で局面を打開でき三笘に、家長昭博、レアンドロ・ダミアンらと“名古屋崩し”の任務を授けたと見ることができる。

 もっとも戦術大国イタリア出身の指揮官、フィッカデンティ監督のスタイルが浸透している名古屋である。試合の入りこそ三笘の突破力を活かしてチャンスを作ったが、徐々に相手の強度の高い守備に押されるようになり、守備網を広げられ、ギャップを突かれて攻め込まれるシーンも増えてくる。20分過ぎからは、どちらかと言えば名古屋のペースだったと言えるだろう。

 現に古巣対戦となった名古屋のキーマン、阿部浩之も「(前半終了間際に)失点するまでは良かったと思います。前半はやられる場面も少なかったので」と振り返る。

 ただし「懸ける想い、今日は勝ちたいという想いが非常に強かった」(谷口彰悟)、「同じ相手に二度負けるのは個人的にも、チーム的にも、ありえない」(守田英正)と、名古屋へのリベンジに燃えていた川崎は、以前のゲームを基にしながら周到な準備を用意してきた。そして、事前の策をピッチで高レベルに表現できるのだから、今の川崎は強いのである。
 
 今季から4-3-3を採用している川崎だが、敗れた名古屋戦のように、逆三角形で構成する中盤においては、アンカーの脇がウィークポイントになり、その修正はシーズンを進めながら行なってきた。ただ前半途中には鬼木監督が、中盤のバランスについてなにやら指示を送る。ここのシーン、中村は次のように説明する。

「僕が(インサイドハーフで)出る時は、(前の)守備はトップ(CF)の選手と2枚、4-4-2、もしくは4-2-3-1みたいな形でスタートしますが、(今日は)ダブルボランチの守田(英正)と(田中)碧の脇のところを締め切れずに使われていたので、これも前日に練習していましたが、(守備時の立ち位置として)4-3-3、4-2-3-1とどちらも練習していて、途中で変えて、役割がハッキリして人にもボールにも行けるようになりました」

 その言葉どおり、状況によっては、中盤の3人がフラットに並ぶような形も見え、名古屋の4-2-3-1の中盤の3枚「トップ下の阿部+2ボランチの米本拓司、稲垣祥」、そしてアタッカー陣に対応している。

 相手を見て柔軟に立ち位置を変えるのは、川崎の攻撃の真骨頂だ。ディフェンスの穴を的確についてゴールを奪うわけだが、今季はより守備の柔軟性も光り、名古屋戦も臨機応変に戦い、相手の勢いを削いだわけだ。

 ちなみに対戦相手の視点として、名古屋のCB中谷進之介は「(両ウイングの)三笘(薫)選手と家長(昭博)選手が予想通りに僕たちセンターバックを消しにきたので、もう少しサイドを使ってというところがありましたが、上手く使えなかったのがひとつありました。また取ったボールに対してフロンターレさんの切り替えにちょっと押し込まれてしまったのかなとも思います」と述懐。

 さらに今オフに川崎から名古屋へ移籍し、古巣と等々力で対戦した阿部に話を聞くと「僕からすれば紅白戦みたいな感じでした」と“らしい”冗談で笑わしてくれた後に、こう続けてくれた。

「スイッチが入った時の人数のかけ方っていうのは、去年僕がやっていた時以上に迫力があるというか、どんどん人が出てきていたと思います。そのなかでも、みんなが何が必要かっていうのを理解しながらやっていたと思いますし、それに対してうちは、そういう役割分担じゃないですけど、出ていく人が少なかったり、そういうところのポジション取りの精度や速さに、やっぱり差があったかなと思います」

 優勝請負人として川崎でリーグ連覇、ルヴァンカップ初優勝に貢献し、古巣のことを熟知している男の言葉が、端的に今季のチームの進化の様子を表わしているだろう。
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