現地時間８月25日にバルセロナのリオネル・メッシが書面で一方的にクラブに退団の意思を伝えたというニュースが世界中に拡散された後、パリ・サンジェルマンは、アルゼンチンの巨星を獲得できるヨーロッパでも数少ないクラブの一つと考えられている。

　しかし、実際のところ、フランスの絶対王者の補強リストに「レオ・メッシ」は入っていない。2019-20シーズン終了時点で、重い財政的損失を抱える見込みとなっているパリSGに、６度のバロンドールを手にしたビッグネームの莫大なサラリーを払える余地はないと見られるからだ。

　ゆえに現時点で、メッシがパリSGに合流する可能性は、ほんの10パーセントほどしかないと言っていい。

　だが、決して「０パーセント」とは言い切れない。2011年５月にカタール投資庁（QIA）の子会社「カタール・スポーツ・インベストメント(QSI)」に買収されて以来、パリSGは常に、移籍市場で周囲をアッと言わせ、エポックメーキングな契約を勝ち取ることを厭わないクラブになったからだ。

　周知の通り、2017年の夏には、合計４億ユーロ（約480億円）近い金額を払って、ネイマールとキリアン・エムバペを同時に引き抜いたのが、記憶に新しい。その１年前に獲得を諦めていたにもかかわらず、である。

　パリSGの財源は無尽蔵ながら、UEFAのファイナンシャル・フェアプレー（FFP）の足枷を嵌められて獲得できなかったのだが、たった１年間で、UEFAに確立された“ルール”に順守できるだけの財政構図をしっかりと構築。その結果、ネイマールとエムバペの二枚抜きという驚愕のメルカートをやってみせたのである。

　しかし、今年に限っては、さすがに状況が異なっているという見方もある。パリSGの人件費が、ネイマールとエムバペのそれで、膨大な額になっているためだ。

　今夏のメルカートでは、高給取りであったエディンソン・カバーニとチアゴ・シウバの退団が決まっているが、7100万ユーロ（約85億2000万円）と言われるメッシのサラリーは、彼らとは比較にならないほど莫大で、ウルグアイ代表FW（1200万ユーロ＝約14億4000万円）とブラジル代表DF（1200万ユーロ＝約14億4000万円）の金額を合計しても、それを遥かに上回る。

　さらに新型コロナウィルスによる危機が、パリSGにも重要な経済的損失をもたらしたという点もある。今年３月の中旬にリーグ・アンが打ち切られ、来る新シーズンも無観客で再開するとなれば、財政面に影響が出ないはずがない。

　2019-20シーズンのパリSGの損失は、１億5000万ユーロ（約180億円）にのぼる見込みで、新シーズンも来夏の決算期には、１億ユーロ（約120億円）の損失は避けられないと予想されている。

　しかも現時点では、バルサと2021年６月までの契約を締結しているメッシが、違約金ゼロのフリートランスファーで解放されるのか、あるいは周囲が想像する極端な高額で買い取られることになるのか、どちらかを言い切れる人間がいない状況だ。

　加えてパリSGは、ネイマールを獲得して以来、バルサと良好な関係にあるとは言い難いクラブ事情もある。したがって、メッシがパリに迎えられる星めぐりには、あまりなっていないと言えるだろう。