ドリブルの質は宇佐美が上も、フィジカルで差を埋める武藤。

どちらが正しい姿というわけではないが、現時点ではアギーレ監督にとって武藤(右)の方がより価値は高いようだ。宇佐美はプレーの幅を広げ、早く同い年の好敵手と同じ土俵に立ちたいことだろう。 (C) SOCCER DIGEST
日本を代表する東西の若手ドリブラー、宇佐美貴史(G大阪)と武藤嘉紀(FC東京)。どちらも所属クラブの下部組織から育った生え抜きと言える選手だ。同じ92年生まれの『プラチナ世代』のふたりだが、今に至る過程は大きく異なる。
アンダー世代のスター選手だった宇佐美に対し、武藤は世代別代表にまったく縁がない。
また、宇佐美は高校2年時の09年に飛び級でトップチームへ昇格したが、一方の武藤は昇格の打診を受けながらも、プロでやれる力はないと自己分析。あえて大学サッカーという回り道を経て、14年に新人としてJリーグへ飛び込んできた。ふたりの道は対照的だ。
そしてワールドカップイヤーが終わりに近づく現在、22歳の立場は逆転している。ハビエル・アギーレが指揮する新しいA代表で輝きを放つのは武藤であり、宇佐美はメンバーにすら一度も名を連ねていない。
飛び級の宇佐美と、一歩ずつ地道に歩んできた武藤。その状況はまるで、「ウサギとカメ」のようにひっくり返った。
なぜ、カメはウサギを追い抜いたのか?
ふたりは同じスピードドリブラーといっても、そのなかでのタイプは異なる。宇佐美は相手の間合いに入り込んで勝負できるタイプ。相手が足を出してくるのを誘い、入れ替わって相手の『真裏を陥れる』ことができる。
一方、武藤は相手の間合いに入らず、自分の間合いをキープしながら「運ぶ」タイプ。そのままスピードで振り切るか、コンビネーションで突破を図る。ドリブルそのものの質は、明らかに宇佐美のほうが高い。
しかし、その差を埋めているのが、武藤のフィジカルの強さだ。8節・C大阪戦で挙げたプロ初得点にそれがよく表われている。
相手を背中ではじき飛ばして前方へボールを送り、裏のスペースへ走り抜けて再びボールを受けると、追撃するDFを半身でブロック。左足でシュートを決めた。ドリブル中の二度のブロックが利いていた。
外圧に対する強さだけではない。31節・名古屋戦では、ドリブルで相手ふたりの間へ強引に割って入り、ペナルティエリアの左へ流れながら、左足で対角のファーサイドへ蹴り込んだ。
スピードに乗りつつ、利き足ではない足で、角度をつけて対角に「クロスファイヤーシュート」を打つのはかなり難度が高いが、鍛え上げられた武藤のボディバランスはそれを可能にする。
相手を抜いたわけではないが、このような苦しいコース取りでゴールに結び付けられるのは秀逸。相手DFは分かっていても、止められない。
「柔」の宇佐美に対し、武藤はパワーを上積みした「剛」のドリブラー。この武藤の武器であるフィジカルこそ、ドイツ帰りの宇佐美が昨年から取り組んでいるものだ。
「技術とセンスがあって、そのうえにフィジカルがあると3つが映える。今はそう思ってワクワクしながらフィジカルに取り組んでいる」と宇佐美は言う。
しかし、19歳から目的を持って大学で取り組んできた武藤は、ただフィジカルを鍛えただけでなく、それを活かす術も心得ている。相手の当たりに耐えるというより、武藤から先に身体を当てて、相手のボディバランスを崩しておく。く。このような球際の駆け引きが抜群に巧い。
言い換えると、スプリント数や運動量を含めてフィジカル面の幅を得られていない宇佐美には、山ほど伸びしろがある。
アンダー世代のスター選手だった宇佐美に対し、武藤は世代別代表にまったく縁がない。
また、宇佐美は高校2年時の09年に飛び級でトップチームへ昇格したが、一方の武藤は昇格の打診を受けながらも、プロでやれる力はないと自己分析。あえて大学サッカーという回り道を経て、14年に新人としてJリーグへ飛び込んできた。ふたりの道は対照的だ。
そしてワールドカップイヤーが終わりに近づく現在、22歳の立場は逆転している。ハビエル・アギーレが指揮する新しいA代表で輝きを放つのは武藤であり、宇佐美はメンバーにすら一度も名を連ねていない。
飛び級の宇佐美と、一歩ずつ地道に歩んできた武藤。その状況はまるで、「ウサギとカメ」のようにひっくり返った。
なぜ、カメはウサギを追い抜いたのか?
ふたりは同じスピードドリブラーといっても、そのなかでのタイプは異なる。宇佐美は相手の間合いに入り込んで勝負できるタイプ。相手が足を出してくるのを誘い、入れ替わって相手の『真裏を陥れる』ことができる。
一方、武藤は相手の間合いに入らず、自分の間合いをキープしながら「運ぶ」タイプ。そのままスピードで振り切るか、コンビネーションで突破を図る。ドリブルそのものの質は、明らかに宇佐美のほうが高い。
しかし、その差を埋めているのが、武藤のフィジカルの強さだ。8節・C大阪戦で挙げたプロ初得点にそれがよく表われている。
相手を背中ではじき飛ばして前方へボールを送り、裏のスペースへ走り抜けて再びボールを受けると、追撃するDFを半身でブロック。左足でシュートを決めた。ドリブル中の二度のブロックが利いていた。
外圧に対する強さだけではない。31節・名古屋戦では、ドリブルで相手ふたりの間へ強引に割って入り、ペナルティエリアの左へ流れながら、左足で対角のファーサイドへ蹴り込んだ。
スピードに乗りつつ、利き足ではない足で、角度をつけて対角に「クロスファイヤーシュート」を打つのはかなり難度が高いが、鍛え上げられた武藤のボディバランスはそれを可能にする。
相手を抜いたわけではないが、このような苦しいコース取りでゴールに結び付けられるのは秀逸。相手DFは分かっていても、止められない。
「柔」の宇佐美に対し、武藤はパワーを上積みした「剛」のドリブラー。この武藤の武器であるフィジカルこそ、ドイツ帰りの宇佐美が昨年から取り組んでいるものだ。
「技術とセンスがあって、そのうえにフィジカルがあると3つが映える。今はそう思ってワクワクしながらフィジカルに取り組んでいる」と宇佐美は言う。
しかし、19歳から目的を持って大学で取り組んできた武藤は、ただフィジカルを鍛えただけでなく、それを活かす術も心得ている。相手の当たりに耐えるというより、武藤から先に身体を当てて、相手のボディバランスを崩しておく。く。このような球際の駆け引きが抜群に巧い。
言い換えると、スプリント数や運動量を含めてフィジカル面の幅を得られていない宇佐美には、山ほど伸びしろがある。