香川真司 「潤滑油」として機能するも、高かった王者バイエルンの壁

カテゴリ:ワールド

田嶋コウスケ

2014年11月02日

香川を軸に放射線状にパスを散らすという意思統一。

上下動を繰り返し、パスワークを円滑にした香川。縦に速い攻撃を巧みに演出したが……。 (C) Getty Images

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 ブンデスリーガ6節から4連敗中で、15位と降格の危険水域に沈むドルトムントが、首位のバイエルンを相手に善戦した。
 
 ドルトムントは31分に先制しながら、終盤に2点を奪われて逆転負け。しかしながら、ユルゲン・クロップ監督の奇襲的とも言える大胆な采配が奏功し、王者バイエルンを苦しめた。
 
 クロップは基本布陣の4-2-3-1ではなく、2トップの下に香川真司を配した4-3-1-2を採用した。守備時には2トップがワイドに開き、香川が「ゼロトップ」のような形になるこのシステムは、今シーズン初めて用いられたもの。2トップとともにバイエルンの守備陣を高い位置からチェイシングした香川は、
「前半は(アンカーの)シャビ・アロンソやGKに対してどんどんプレスをかけていき、チャンスがあれば狙っていいと言われていた。そこがうまくハマったところもあった。もちろん、それによって(相手に)背後のスペースを使われることもあったが、それほど自由にやらせなかったと思う」
 と、その狙いを説明した。
 
 バイエルンのシステムは、フラットに並ぶ3バックの前にアンカーのシャビ・アロンソが入った3-6-1。パスの起点となるシャビ・アロンソと3バックを抑えることで、ドルトムントはバイエルンの攻撃を分断しようとした。
 
 そしてボールを奪えば、手数も時間もかけずに素早く前へ展開する。2トップのマルコ・ロイスとピエール=エメリク・オーバメヤンはDFラインの背後に抜ける意識を高く持ちながら、外から中へのダイアゴナルな動きでトップ下の香川との距離を縮めたり、3バックの相手が手薄になりがちなサイドのスペースに走り込んだりと、工夫をこらして攻めた。
 
 そのなかで香川は、上下動を繰り返してパスワークを円滑にした。2トップとの距離が縮まれば、ワンツーやスルーパスで崩しにかかり、2トップがサイドを走れば、シンプルにスペースへとパスを出す。まるで潤滑油のように機能し、パスやフリーラン、ドリブルで最前線と中盤をきれいに繋いだ。
 
 ドルトムントの狙いが文字通り結実したのが、31分の先制点だった。GKロマン・ヴァイデンフェラーのロングスローを受けたオーバメヤンが、ワンタッチで香川へ。これを香川もワンタッチでオーバメヤンにリターン。右サイドを抜け出したオーバメヤンがクロスを入れ、最後はファーサイドから走り込んだロイスがヘディングシュートで仕留めた。
 
「ボールを奪ってからの速いカウンターは僕たちの武器でもあります。それがよく表われていたゴールだと思います」
 試合後の香川がそう振り返ったように、GKのスローからタッチ数にしてわずか5、時間にしてわずか11秒のカウンターで先制ゴールを奪ったのだった。
 
 この試合の香川は、攻撃の中心としてタクトを振り続けた。素晴らしかったのは、ボールを受けるエリアだ。CBジェローム・ボアテングの手前、アンカーのシャビ・アロンソの背後の「ギャップ」にうまく滑り込み、巧みに味方のパスを引き出した。さらに、「あまり守備をしない」(香川)アリエン・ロベンの背後のスペースも突くなど、相手を引きつけてパスやワンツーで崩しにかかる。チームとしても、香川にいったん預け、そこから放射線状にパスを散らしていくという意思統一が図られているようだった。
 
 試合後、香川は次のように話している。
「“間”というか、ロッベンなんかは守備をあまりしないので、そのスペースが空いていたりする。だからうまくボールを奪えば、そういう“間”のスペースで受けて、2トップを見るプレーを意識していました」
「シャビ・アロンソの裏で、うまくポジションを取って、ターンができたらチャンスかなと思っていました」
 
 その言葉通りのプレーで決定的なチャンスをつかんだのが60分。ロイスのワンタッチパスを、まさにシャビ・アロンソの背後で受けて素早くターン。寄せにくるCBダビド・アラバの間合いを外し、左足でシュートを放った。ボールはわずかにゴール右に逸れたが、ドルトムントの狙いと、香川の持ち味が凝縮したシーンだった。
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