ひとりだけ「不文律」を守った南野
「審判の笛が鳴るまでは、決してプレーを止めてはならない」
それは世界中で広く知られる、サッカーの“不文律”である。今さら言うまでもない。それほどに浸透している言い回しだ。
しかし、実際にはこの禁を破ってしまうことの方が多いだろう。判定に不満を感じ、激しく主審に詰め寄る。自分で勝手に判断し、怒りをアピール。自らプレーを止めて、ボールを抱えてしまうような選手もいる。
それは世界中で広く知られる、サッカーの“不文律”である。今さら言うまでもない。それほどに浸透している言い回しだ。
しかし、実際にはこの禁を破ってしまうことの方が多いだろう。判定に不満を感じ、激しく主審に詰め寄る。自分で勝手に判断し、怒りをアピール。自らプレーを止めて、ボールを抱えてしまうような選手もいる。
事実、現在UAEで開催されているアジアカップの準決勝、日本戦におけるイランの選手たちもそうだった。交錯プレーの後、ボールが流れた方向に走るのではなく、審判に向かっていって抗議。それに合わせ、周りにいた選手も同じように審判に詰め寄っていった。
その時、不文律を守る選手がひとりだけいた。
南野拓実は相手選手と交錯し、ピッチに倒れた。ボールは、ゴールラインに向かって転がっていくところだった。イランの選手はその行方を見て、「プレーは切れる」と勝手に判断したのだろう。しかし、南野だけは違った。立ち上がって猛然と走り出し、ラインを割る前にボールに追いついた。
プレーは切れていなかった。続いていたのだ。
この事実に、イランの選手は明らかに狼狽した。3、4人の選手が慌てて、ゴール前に戻る。この時、枚数的には足りていたのだが、彼らは正しいポジションを取ることができていなかった。結局、3人が“被る”かたちになって、裏に走り込んでいた大迫勇也を完全にフリーにしてしまった。
この瞬間、南野はあらゆる意味で優位に立っていた。
ひとりだけが抜け出す格好となり、左サイドから相手のプレッシャーを全く受けていない。時間的、空間的な猶予を得て、ペナルティーエリア内でマークを外した大迫と呼吸を合わせるようなクロスを放つ。右足のキックは正確で、ぴたりと大迫の頭に合った。GKが出てきたが、間に合っていない――。歓喜の先制点(=決勝点)に繋がった。
笛が鳴るまでプレーを続けた、南野の殊勲だった。