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EURO予選に深く関わる歴史、地政学、宗教学...。久保建英の言葉にも感じた移動による疲労との戦いも【喜熨斗勝史の欧州戦記】

カテゴリ:連載・コラム

サッカーダイジェスト編集部

2023年11月02日

ハンガリーとモンテネグロとの重要な2戦を迎える

モンテネグロ戦での風景。セルビアはEURO予選で重要な連戦を迎えていた。

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 セルビア代表のドラガン・ストイコビッチ監督を右腕として支える日本人コーチがいる。“ピクシー”と名古屋でも共闘し、2010年のリーグ優勝に貢献した喜熨斗勝史だ。

 そんな喜熨斗氏がヨーロッパのトップレベルで感じたすべてを明かす連載「喜熨斗勝史の欧州戦記」。佳境を迎えたEURO予選や、クラブと代表の移動による選手たちのコンディションにまつわる話などを語ってくれた。

――◆――◆――
 
 セルビア代表としては初となる欧州選手権(EURO2024)出場まで、あと勝点1となりました。

 10月に行なったアウェー・ハンガリー代表戦、ホーム・モンテネグロ代表戦は、結果から先に言えば1勝1敗。6月から始まったEURO2024予選は簡単な試合はなく、特にモンテネグロ戦(17日)は本当に後がない状況での戦いになりました。

 ハンガリーに1-2で敗戦。この時点で我々は残り2試合で勝点10の2位。対してモンテネグロは残り3試合で勝点8の3位。直接対決で負ければ順位が入れ替わり、自力での出場は消滅していました。そんな崖っぷちに立った中、2連敗したハンガリー戦の現実と向き合うことを考えました。

 我々の失点パターンはなんだろうか、と。

 昨年のワールドカップ・カタール大会よりも前に遡って分析することにしました。相手が4バックや3バックなどのシステム、DFラインの高さ設定とかカウンターの鋭さ...などは普通に見れば分かる範疇。そうではなく、もう少し掘り下げて、別角度から分析を進めてみました。

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モンテネグロ戦の試合後の光景。

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 見えてきたのは、セルビア代表は規律正しく辛抱強く守ってくるチームに弱いということ。ピクシー(ドラガン・ストイコビッチ監督)のマインドでもご理解していただけるように、我々は攻撃面においては辛抱強く繰り返せます。ただ攻撃に比重を置く分、守備で一瞬の穴ができてしまう時があったのです。

 なぜか。それは「SEAパワー」「Landパワー」という言葉がありますが、地政学的なものに由縁するのではないかと考えます。セルビアは8か国の国境と接している国で、海に囲まれていない「Landパワー」の国。Landパワーの国は、歴史的にも外圧への警戒心を強くしなければなりません。

 セルビアはオスマントルコ帝国やハンガリー王国に支配されてきた時代を経験しています。そんな背景があり、相手に攻められないようにするためには攻めるというマインドが醸成されます。対して「SEAパワー」を持つ国は外圧が少ないため、自らのアイデンティティやスタイルなどをじっくりと醸成できる素地があります。

 ハンガリーも地政学的には「Landパワー」の国。ただ彼らはかつて一時代を築き上げた歴史があります。大国のイメージがあり、どちらかと言えば攻めて領土拡大をするよりも得た領土を守る意識を持っている国だと感じています。事実、ハンガリーとの2連戦で我々はボール保持率もシュート数でも圧倒的に勝っていましたが、彼らに耐えられました。そして少ないチャンスを決められて負けました。

 もちろん、セルビアの攻撃的なメンタリティを変えることはできません。でも「そういう相手に弱い」「辛抱強く守るところが足りない」というのを分かってもらわないといけないと感じました。その話をした上で、モンテネグロ戦へ向けた練習を落とし込んでいきました。

 セルビアとモンテネグロがひとつになってユーゴスラビア代表を形成し、EURO2000に出場したことを覚えている方もいらっしゃると思います。

 セルビアとモンテネグロは同じ民族で、同じようなメンタルを持っています。打ち合いの試合になるのは必至。どこが勝敗を分けるポイントになるのかといえば「どちらが辛抱強く守れるか」でした。そして迎えたモンテネグロ戦。我々は同点に追いつかれるのですが、その後の失点は与えず、2得点を追加して勝利することに成功しました。

 欧州の代表国のコーチをやっていて強く感じるのは、その国の持っている歴史や地政学、宗教学などを理解する必要性。今回、歴史を繙いてアプローチしましたが、そこを理解して練習に落とし込んでいく方が効果的だと感じました。これをもっと早く分かっていれば良かったなと反省しました。

 ともあれ、来月のブルガリア戦で勝点1以上積み上げれば本選出場。その中で我々が懸念しているのは「疲労」です。

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