【セリエA現地コラム】驚きの快進撃を見せるサッスオーロ。そのハイレベルな戦術とは?

カテゴリ:連載・コラム

片野道郎

2015年12月17日

チームを率いるのは、中田英寿の元同僚。

毎シーズン着実に順位を上げ、その手腕が高く評価されているディ・フランチェスコ。古巣ローマの次期監督候補としても名前が挙がる。(C)Getty Images

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 ビッグクラブ勢が週替わりで首位に立つというスリリングな混戦が続くセリエAの前半戦。ここまで7勝5分け3敗(16節のトリノ戦は濃霧のため延期)の6位と、プロビンチャーレ(地方都市の中小クラブ)勢の中で際立った健闘を見せているのがサッスオーロだ。
 
 イタリア半島の根元、エミリア=ロマーニャ州のモデナに近い人口わずか4万人の小都市を本拠地とするサッスオーロ。セリエAに初昇格してからまだ3年目という「新参者」にもかかわらず、緑と黒の縦縞という特徴的なシャツはすでに、ジェノアやトリノ、アタランタといった古豪にも引けを取らない存在感を示している。
 
 今シーズンは開幕戦でナポリを下して波に乗ると、ローマ、フィオレンティーナと引き分け、ユベントスを1-0で下す金星を挙げるなど、上位陣相手にも互角の戦いを挑んで結果をもぎ取り、EL出場権をめぐる5位争いにしっかり絡んでいる。
 
 チームを率いるのは、かつてローマで中田英寿の同僚だった(ポジション争いのライバルでもあった)就任4年目、46歳のエウセビオ・ディ・フランチェスコ。12-13シーズンにセリエBで引き受けたサッスオーロを1年で昇格させると、2年連続でA残留に導いた(14年1月に一度解任されたものの、約1か月後に復帰している)。
 
 基本とするシステムは、ローマ時代の恩師ズデネク・ゼーマンの影響を強く受けた、縦への志向がきわめて強い4-3-3。格上相手でもベタ引きするような戦術は採らず、コンパクトな陣形を低過ぎない位置に保って組織的かつアグレッシブなプレッシングでボールを奪取。そこから素早く足下ではなくスペースにボールをつないで、横パスを極力使わず縦へ縦へと攻め上がる組織的な速攻で一気にゴールを狙う。
 
 多くのビッグクラブが攻撃を前線に擁する大物ストライカーの個人能力に依存するなか、サッスオーロは組織的な連携によるコレクティブなメカニズムを武器とする。それを象徴するのが、前線の3トップがほとんど固定されておらず、7人のFWを試合ごとに入れ替えながら起用しているところだ。
 
 ディ・フランチェスコの4-3-3は前線のアタッカーに対して、攻撃時にはオフ・ザ・ボールで裏のスペースに走り込む動きを繰り返し、守備時にはボールロスト直後のアグレッシブなプレッシング、そしてその後自陣まで引いてブロック形成に参加するというハードワークを要求する。その運動量は、ひとりで90分続けるのは困難なレベル。実際、交替枠のほとんどは3トップの入れ替えに使われているのだ。
 
 ここまでの15試合で挙げた全19ゴールのうちFW陣が決めた14点は、ほぼ均等に6人のアタッカーに分散している。これは個人能力に依存するのではなく組織的なメカニズムを機能させて攻撃している証拠だ。
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