初来日は酷暑での2試合。組織としては魅せられなかったが…。


12月14日の朝、バルサ一行は成田空港に到着。そのなかには、左大腿部を痛めているネイマール(写真下)の姿もあった。陣容の豪華さは、過去に来日したチームのなかでも最高と言えるだろう。 (C) REUTERS/AFLO
欧州王者としてクラブワールドカップに出場するバルセロナ。前回の同大会出場は4年前であり、横浜国際競技場(日産スタジアム)でネイマール擁するサントスを4-0で一蹴した衝撃は、いまだ多くの人々の記憶に残っているだろう。
3度目の世界制覇に向け、まずは12月17日の準決勝に臨むバルサ。決戦を前に、ここでは過去に目を向け、これまでこのクラブが日本で披露したゲームを振り返っていきたい。
今回は親善試合編。世界的なビッグクラブであり、古くから日本でも人気のあったバルサだけに、長く来日が待たれたが、ようやく実現したのは今から25年前ことだった。
時は、イタリア・ワールドカップに世界が熱狂した1990年の夏。当時の日本は経済的にはバブルの絶頂にあったが、サッカー界は組織としてプロ化もされておらず、世界の舞台とは無縁の寂しい状態にあった(同大会も1次予選で敗退)。
そんなサッカー後進国に、バルサがやって来た。広島と東京で1試合ずつを戦った彼らのユニホームには、珍しく大会スポンサーのロゴが掲出されていた。
90年の夏といえば、これからヨハン・クライフ体制が3シーズン目を迎えようというところであり、CSKAソフィアから点取り屋のフリスト・ストイチコフ、マジョルカからCBミゲル・アンヘル・ナダルを獲得した他、アルベルト・フェレールやジョセップ・グアルディオラがトップチームに昇格した時期である。
選手の何人かはワールドカップでの激闘を終えたばかり、さらに暑さ厳しい日本の夏と、バルサはコンディション的に厳しい状況にあり、しかもあくまで親善試合とあって、組織としてのハイレベルなプレーはほとんど見ることができなかった。
ロナルド・クーマン、ミカエル・ラウドルップといった日本での知名度も人気も高い選手は個人技で世界の技を見せたが、夜になっても33度という暑さのなかで、彼らには疲労の色がありありと窺えた。
広島での第1戦は、バルサにとって新シーズン最初のゲームであり、まだシステムも定まっていない状態だった。クライフ監督はこの日本リーグ選抜との試合で、中盤の主軸だったロベルトをSBに置くなど、様々なことを試した。
ちなみにバルサの選手やスタッフが、世界的な知名度は皆無の日本リーグ(Jリーグではない)選抜の選手を知っているわけはなかったが、そんなチームを率いるのが82年スペイン・ワールドカップで世界を魅了したブラジル代表の一員だったオスカー(もちろん超有名人だ)だと知り、一様に驚いたというエピソードがある。
試合はバルサが先制するも、その後に追いつかれて終了。しかし90分を通してダラけたムードはなく、格下の相手にも厳しいプレスを仕掛けるなど、プロとしてあるべき姿勢を示した点はさすがだった。
続く東京・駒沢競技場での2戦目は、広島の夜よりはいくらか暑さが和らいだとはいえ、それでも30度に近い厳しい環境のなかで行なわれた。
炎天下のデーゲームは、とりわけバルサにとってきつく、日本リーグ選抜は集中力を欠く相手の隙を突き、2度のリードを奪う。しかし、日本リーグ選抜から外国人選手が交代で退くと主導権はバルサに移り、フリオ・サリーナスの2ゴールなどで4-2の逆転勝利を飾った。
クライフは監督でありながら、前座試合に選手として出場するなど、ファンサービスにも勤しんだ。そして帰途に着く際には、「次は欧州王者として日本に戻って来る」と宣言。約束は2年後に果たされることになる。
【写真で振り返る】バルサ日本遠征1990
◎JALカップサッカー ’90・広島大会
90年7月27日・広島スタジアム
バルセロナ 1-1 日本リーグ選抜
得点:バ=ソレール(24分) 日=柱谷幸(49分)
◇バルセロナ
出場メンバー(前半):GKスビサレータ、DFアレサンコ、L・レカルテ、セルナ、MFソレール、クーマン、ウルバノ、フェレール、アモール、FWラウドルップ、バルベルデ
出場メンバー(後半):GKスビサレータ、DFソレール(75分L・レカルテ)、ウルバノ、ナンド、ロベルト、MFエウセビオ、バケーロ(75分アモール)、サリーナス、FWベギリスタイン、ストイチコフ
監督:クライフ
◇日本リーグ選抜
出場メンバー:GKアベリヤ、DF田中真(61分浅岡)、梶野智(HT八木)、勝矢、モネール、MF境田、マルコス、木村(70分三浦泰)、ホルヘ(77分松橋)、FWレナト(56分水沼)、柱谷幸(82分澤入)
監督:オスカー
◎JALカップサッカー ’90・東京大会
90年7月29日・駒沢競技場
バルセロナ 4-2 日本リーグ選抜
得点:バ=ベギリスタイン(38分、サリーナス(56分・83分)、アモール(72分) 日=柱谷幸(14分)、レナト(48分)
◇バルセロナ
出場メンバー:GKスビサレータ、DFアレサンコ(35分アモール)、ロベルト(69分ウルバノ)、ナンド(46分L・レカルテ)、MFクーマン、ソレール(39分セルナ)、バケーロ(46分セルジ)、フェレール、ラウドルップ(46分サリーナス)、FWベギリスタイン(87分ゴイコエチェア)、ストイチコフ
監督:クライフ
◇日本リーグ選抜
出場メンバー:GKアベリヤ(77分伊藤裕)、DF梶野智(57分八木)、モネール(68分浅岡)、勝矢、田中真、MF境田、マルコス(68分三浦泰)、木村和、ホルヘ(57分松橋)、FWレナト(57分水沼)、柱谷幸(77分澤入)
監督:オスカー
3度目の世界制覇に向け、まずは12月17日の準決勝に臨むバルサ。決戦を前に、ここでは過去に目を向け、これまでこのクラブが日本で披露したゲームを振り返っていきたい。
今回は親善試合編。世界的なビッグクラブであり、古くから日本でも人気のあったバルサだけに、長く来日が待たれたが、ようやく実現したのは今から25年前ことだった。
時は、イタリア・ワールドカップに世界が熱狂した1990年の夏。当時の日本は経済的にはバブルの絶頂にあったが、サッカー界は組織としてプロ化もされておらず、世界の舞台とは無縁の寂しい状態にあった(同大会も1次予選で敗退)。
そんなサッカー後進国に、バルサがやって来た。広島と東京で1試合ずつを戦った彼らのユニホームには、珍しく大会スポンサーのロゴが掲出されていた。
90年の夏といえば、これからヨハン・クライフ体制が3シーズン目を迎えようというところであり、CSKAソフィアから点取り屋のフリスト・ストイチコフ、マジョルカからCBミゲル・アンヘル・ナダルを獲得した他、アルベルト・フェレールやジョセップ・グアルディオラがトップチームに昇格した時期である。
選手の何人かはワールドカップでの激闘を終えたばかり、さらに暑さ厳しい日本の夏と、バルサはコンディション的に厳しい状況にあり、しかもあくまで親善試合とあって、組織としてのハイレベルなプレーはほとんど見ることができなかった。
ロナルド・クーマン、ミカエル・ラウドルップといった日本での知名度も人気も高い選手は個人技で世界の技を見せたが、夜になっても33度という暑さのなかで、彼らには疲労の色がありありと窺えた。
広島での第1戦は、バルサにとって新シーズン最初のゲームであり、まだシステムも定まっていない状態だった。クライフ監督はこの日本リーグ選抜との試合で、中盤の主軸だったロベルトをSBに置くなど、様々なことを試した。
ちなみにバルサの選手やスタッフが、世界的な知名度は皆無の日本リーグ(Jリーグではない)選抜の選手を知っているわけはなかったが、そんなチームを率いるのが82年スペイン・ワールドカップで世界を魅了したブラジル代表の一員だったオスカー(もちろん超有名人だ)だと知り、一様に驚いたというエピソードがある。
試合はバルサが先制するも、その後に追いつかれて終了。しかし90分を通してダラけたムードはなく、格下の相手にも厳しいプレスを仕掛けるなど、プロとしてあるべき姿勢を示した点はさすがだった。
続く東京・駒沢競技場での2戦目は、広島の夜よりはいくらか暑さが和らいだとはいえ、それでも30度に近い厳しい環境のなかで行なわれた。
炎天下のデーゲームは、とりわけバルサにとってきつく、日本リーグ選抜は集中力を欠く相手の隙を突き、2度のリードを奪う。しかし、日本リーグ選抜から外国人選手が交代で退くと主導権はバルサに移り、フリオ・サリーナスの2ゴールなどで4-2の逆転勝利を飾った。
クライフは監督でありながら、前座試合に選手として出場するなど、ファンサービスにも勤しんだ。そして帰途に着く際には、「次は欧州王者として日本に戻って来る」と宣言。約束は2年後に果たされることになる。
【写真で振り返る】バルサ日本遠征1990
◎JALカップサッカー ’90・広島大会
90年7月27日・広島スタジアム
バルセロナ 1-1 日本リーグ選抜
得点:バ=ソレール(24分) 日=柱谷幸(49分)
◇バルセロナ
出場メンバー(前半):GKスビサレータ、DFアレサンコ、L・レカルテ、セルナ、MFソレール、クーマン、ウルバノ、フェレール、アモール、FWラウドルップ、バルベルデ
出場メンバー(後半):GKスビサレータ、DFソレール(75分L・レカルテ)、ウルバノ、ナンド、ロベルト、MFエウセビオ、バケーロ(75分アモール)、サリーナス、FWベギリスタイン、ストイチコフ
監督:クライフ
◇日本リーグ選抜
出場メンバー:GKアベリヤ、DF田中真(61分浅岡)、梶野智(HT八木)、勝矢、モネール、MF境田、マルコス、木村(70分三浦泰)、ホルヘ(77分松橋)、FWレナト(56分水沼)、柱谷幸(82分澤入)
監督:オスカー
◎JALカップサッカー ’90・東京大会
90年7月29日・駒沢競技場
バルセロナ 4-2 日本リーグ選抜
得点:バ=ベギリスタイン(38分、サリーナス(56分・83分)、アモール(72分) 日=柱谷幸(14分)、レナト(48分)
◇バルセロナ
出場メンバー:GKスビサレータ、DFアレサンコ(35分アモール)、ロベルト(69分ウルバノ)、ナンド(46分L・レカルテ)、MFクーマン、ソレール(39分セルナ)、バケーロ(46分セルジ)、フェレール、ラウドルップ(46分サリーナス)、FWベギリスタイン(87分ゴイコエチェア)、ストイチコフ
監督:クライフ
◇日本リーグ選抜
出場メンバー:GKアベリヤ(77分伊藤裕)、DF梶野智(57分八木)、モネール(68分浅岡)、勝矢、田中真、MF境田、マルコス(68分三浦泰)、木村和、ホルヘ(57分松橋)、FWレナト(57分水沼)、柱谷幸(77分澤入)
監督:オスカー