子どもがありのままの自分を受け入れなくなる親子関係は…。
メンタルトレーナーの後藤の下を訪れるのは、大人だけではない。小学生とその親もいる。そんなひとりに、強気な発言を繰り返すサッカー少年がいた。いつもポジティブでいようとしている。強がってばかりいた昔の自分のようだった。
少年が変わりだしたのは、父親の話ができるようになってからだ。Q「ねえねえ、お父さんって、どんな感じ?」→A「お父さん、ボクに無関心だよ」→Q「どういうこと?」→A「ボクがヘボすぎるから、興味ないんだって。言われた」→Q「え、そうなの?」→A「そうなんだって」→Q「そっか、どうだった?」→A「ちょい、へこむよね」。初めて言えたじゃん、感情。「そうか、へこむよね。でも私も実はそうだったんだよ。妹がめっちゃすごくてさ、お父さん、わたしに興味ないから、試合観にこないんだよ」→「マジ?どうだった?」→「めっちゃへこんだ」→「分かる~」。
できるだけ多くのお父さん、お母さんに知ってほしいと、後藤は訴える。できない自分を否定される、できる自分しか肯定されない出来事が繰り返されると、子どもはありのままの自分を受け入れられなくなってしまう。とくに幼少期の親との関係は、その後に大きく影響する。
そんな話をすると、熱心な親御さんほど質問してくれる。子どもにどう声を掛け、どう褒めればいいのか。逆に、言っちゃいけない言葉は?後藤はまずこう勧める。
「どんな状態でも、まず受容すること。まずはハグからです。すぐにできることですよね」
思い出すのは11年3月11日。あの東日本大震災の後、後藤はスペインで無数の人にハグされた。チームメイト、そのママやパパたち、クラブハウスのオジサンたち……。
「本当に心配して、ぎゅっとしてくれている。その気持ちが、言葉にしなくても伝わってきたんです。私は大活躍していた選手じゃなかったし、でもこの人たち、そんなの関係なく私のこと見てくれているのかなって。そもそも拒否していたのは私なのかって。今の自分、つまりその時の自分を考えるきっかけの大前提となる安心を、ハグで与えてもらいました。あの安心があったから、いろんなことに気付けたんです」
親が子に与える安心は、自己肯定感の土台だ。スペインの子どもたちは、ハグで育ったんだろうな。後藤はそう思う。親たちは、言葉など何も掛けていないのではないかと。
「スペインでは子どもの試合が終わると、勝とうが負けようが、その子がすごいミスをしようが、お母さんはハグをするんです。『お疲れさま、さあ家に帰ろう』って」
やろうと思えば、誰にでもできるハグ。もしかすると小さなその積み重ねが、未来の大きな変化に繋がっていくのかもしれない。
取材・文:手嶋真彦(スポーツライター)
少年が変わりだしたのは、父親の話ができるようになってからだ。Q「ねえねえ、お父さんって、どんな感じ?」→A「お父さん、ボクに無関心だよ」→Q「どういうこと?」→A「ボクがヘボすぎるから、興味ないんだって。言われた」→Q「え、そうなの?」→A「そうなんだって」→Q「そっか、どうだった?」→A「ちょい、へこむよね」。初めて言えたじゃん、感情。「そうか、へこむよね。でも私も実はそうだったんだよ。妹がめっちゃすごくてさ、お父さん、わたしに興味ないから、試合観にこないんだよ」→「マジ?どうだった?」→「めっちゃへこんだ」→「分かる~」。
できるだけ多くのお父さん、お母さんに知ってほしいと、後藤は訴える。できない自分を否定される、できる自分しか肯定されない出来事が繰り返されると、子どもはありのままの自分を受け入れられなくなってしまう。とくに幼少期の親との関係は、その後に大きく影響する。
そんな話をすると、熱心な親御さんほど質問してくれる。子どもにどう声を掛け、どう褒めればいいのか。逆に、言っちゃいけない言葉は?後藤はまずこう勧める。
「どんな状態でも、まず受容すること。まずはハグからです。すぐにできることですよね」
思い出すのは11年3月11日。あの東日本大震災の後、後藤はスペインで無数の人にハグされた。チームメイト、そのママやパパたち、クラブハウスのオジサンたち……。
「本当に心配して、ぎゅっとしてくれている。その気持ちが、言葉にしなくても伝わってきたんです。私は大活躍していた選手じゃなかったし、でもこの人たち、そんなの関係なく私のこと見てくれているのかなって。そもそも拒否していたのは私なのかって。今の自分、つまりその時の自分を考えるきっかけの大前提となる安心を、ハグで与えてもらいました。あの安心があったから、いろんなことに気付けたんです」
親が子に与える安心は、自己肯定感の土台だ。スペインの子どもたちは、ハグで育ったんだろうな。後藤はそう思う。親たちは、言葉など何も掛けていないのではないかと。
「スペインでは子どもの試合が終わると、勝とうが負けようが、その子がすごいミスをしようが、お母さんはハグをするんです。『お疲れさま、さあ家に帰ろう』って」
やろうと思えば、誰にでもできるハグ。もしかすると小さなその積み重ねが、未来の大きな変化に繋がっていくのかもしれない。
取材・文:手嶋真彦(スポーツライター)