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【なでしこ転身秘話】「できない自分」を受け入れる――メンタルトレーナー後藤史がスペインで掴んだ"自己肯定感"のハグ組み方

カテゴリ:連載・コラム

手嶋真彦

2017年07月21日

劇的な自身の変化。「メンタルトレーナーになろう」

マンツーマンのメンタルトレーニングだけでなく、親子を対象とした講習会の機会も少なくない。

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 スペインの高い空が、後藤は嫌いだった。いつも晴れていて、その青空がやけに高く見えるのだ。「ちっぽけだなあ、お前。そう言われているような気がして」。勝手に、スペイン中を敵に回していた頃だ。
 
 アーセナル戦の後、思いもよらない自分の感情に後藤は気が付いた。
 
「サッカーはもういいな」
 
 なんで?の自問自答はこう続く。もともとは父親が好きなサッカーだった。認めてほしいと、不足感を埋めるために頑張ってきた。ところが、あのアーセナル戦で――。
 
「自分で自分を認めたら、もう不足感が出てこなくなったんです」
 
 学生時代から、チームメイトに言われてきた。
 
「フミって、35歳くらいまでは現役でやっていそうだよね」
 
 そんな気は自分でもしていた。もっと上手くならなきゃいけない。やめちゃいけない。そういう思考に縛られていたからだろう。後藤は決めた。メンタルトレーナーになろう。「大学でもなでしこリーグでも、自分よりはるかに才能のある選手がどんどんやめていきました。もしかするとあの人、メンタルが原因でやめたのかもって、何人も頭に浮かんできて」
 
 できるのではないかという自負もあった。手応えは、メンタルトレーニングによる自分自身の劇的な変化だった。25歳での引退を決断した後藤は、いつの間にか好きになっていた。最初は嫌いだったスペインのあの高い空が――。
 
―――◆―――◆―――
 
 風邪を引いたと偽り、練習をサボった2日目の夜、後藤は勇気を振り絞り、日本の両親に電話を掛けている。サッカーをやめたい。そう伝えると、母親が泣きだした。後藤は思った。がっかりして泣いているのだろうと。しかし、そうではなかった。
 
「あなたはすごい。そう言ったんです。自分でどんどん道を切り開いて、弱音なんて吐いたことがない。言葉も何ひとつ分からない場所で。もう帰っておいで。もういいよって」
 
 後藤も泣いた。スカイプの映像は消していたので、声しか聞こえていない。それでも両親の前で涙を流すのは、物心がついてから初めてだった。後藤は勝手に思い込んでいたのだ。越境の進学で故郷を離れた高校時代からずっと、成功しなきゃ、帰れないと。
 
 この電話の頃は、スペインでまだ言葉も通じず、周囲に迷惑を掛けまくっていると自分を責めていた。人間としてもダメなんじゃないかと。
 
「でもわたし、帰れる場所があるって分かった時に、大したことない自分を受け入れられたんです。できない自分でも存在していい場所が、あれ、うちにあるの?って」
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