佐藤寿人――偉大なストライカーが歩んだ道と愛される理由

カテゴリ:Jリーグ

中野和也

2016年12月02日

チームとしてクラブとしての成長が、佐藤寿人に対する「ありがとう」につながる。

寿人はサポーターやクラブが最も辛い時、常に近くに寄り添っていた。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 仙台でも広島でも、寿人はサポーターやクラブが最も辛い時、常に近くに寄り添っていた。2007年の降格時、たとえサポーターの前で残留を約束したとしても、本来であればそこに縛られる必要もない。「日本代表のこともあり、やはりJ1でプレーしたい」と言えば、それはそれで周囲は納得しただろう。
 
 だが、彼はそうしなかった。仙台の時と同じように、仲間たちと、サポーターとともに、歩くことを誓った。そしてチームを浮上させるべく、走り、闘い、得点をとってサポーターとともに歓喜した。何度も、何度も。
 
 そういう歴史が存在するからこそ、寿人が移籍を決断した時、仙台でも広島でも、クラブもそしてサポーターも、彼の気持ちを尊重した。「寿人の移籍は痛い。ダメージも大きい」と広島・織田秀和社長が語ったように、決して諸手を挙げて送り出すわけではない。
 
 断腸の思い。しかし。
 
「一時の感情に左右されるのではなく、サッカー選手として、プロ選手として、どうあるべきか。どうありたいのか」
 
 佐藤寿人というストライカーの貢献を考えれば、12年前と同じような彼のプロとしての意志を、尊重せざるを得ないのである。
 
 仙台は、エースが抜けた痛手を力に変え、2009年にJ2優勝を飾って昇格を決定。その後、東日本大震災という大きな試練を乗り越えて、2012年には広島と優勝を争った。
 
 広島もまた、スペシャルなストライカーの移籍という大ピンチをバネにして、チームとしてクラブとして成長していかねばならない。それが12年もの長きにわたってサンフレッチェ広島を支えてきた偉大なる佐藤寿人に対する、「ありがとう」の意思表明につながるのだ。 
 
文:中野和也(紫熊倶楽部)
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