熊本地震の際には多くのタイ・ホンダの社員から募金をいただいた。
――では少しサッカーから離れましょう。今年4月に、ご出身の熊本を震源とする地震が起きました。ご家族は安否も含め心配だったのではないですか?
はい、4月14日に1回目大きな地震があって、また16日の早朝に本震があって。「熊本で震度7」という報を見た時に正直覚悟しましたよ。両親へ連絡したら無事だと分かり安心したのですが、実は時を同じくして妻の出産も控えていたんです。そして16日の午前中に娘が産まれるというエピソードも重なって忘れられない日になりました。
正直いろいろと精神的に不安定な日が続いていたのですが、出産にも初めて立ち会えた激動の一日でした。ただその後も余震が続いていたじゃないですか。両親のことも心配だし、一度帰国しようかとも考えたのですが、現実的ではないなと。であれば、タイで自分にできることをやろうとの思いから、いろいろと考えて行動させてもらっています。近くに居る友人知人に相談を聞いてもらって、タイからも応援している人が多いことを形で表わしたくて。
――なるほど。クラブの母体であるタイ・ホンダにも掛け合い、工場内で義援金活動も行なったそうですね。
はい、多くのタイ・ホンダ社員の方々ら沢山の募金をいただきました。感謝で涙が自然と心の底から湧き出てきて、素直に嬉しかったです。リアルな話、彼らってそんなに多くの給与をもらっていないと思うんです。それでも熊本のために、日本ためにとみんなで協力してくれて。実は、熊本県菊池郡大津町に本田技研のバイク工場があって、研修で行ったことがあるタイ・ホンダのタイ人スタッフも多いんです。また2011年にタイ・ホンダ工場が洪水被害で大変な目に遭ったりしたこともあるんで、何かしなくてはとタンブン(お寺に寄進したり、恵まれないもを援助するような徳を積むことを行う仏教の教え)精神を働かせてくれたのだと理解しています。
――日本各地から世界へ広がりを見せている、社会貢献活動を行なうピースボールアクションタイランド代表幹事もされているそうです。どんな動機からだったのでしょうか?
私はここタイでプロサッカー選手になって、ご飯を食べられるようになったので、タイにすごく感謝しています。なので、いつかタイへ恩返しがしたいなという気持ちを持っていたなかで、日本発信のピースボールアクションの存在を知って興味を持ち、オフで日本へ一時帰国した際に、ピースボールアクションの代表をされている大阪成蹊大学の林恒宏先生のもとへ話を聞きに寄らせていただいたのがきっかけでした。2014年7月からタイで活動をさせていただいています。
――慈善活動やボランティアをやられていたり、またタイ在住の日本人の子どもたちへ積極的にサッカーを教えたりと、率先して奉仕活動を行なっているイメージが樋口選手には強いんです。
このタイという国で、皆に生かされて自分があることを日々感じています。これからもタイ社会に支えていただくと思いますし、感謝の気持ちを忘れてはダメだろうと。実は鳥取時代のエピソードなんですが、契約満了で退団する際に社長さんから『お前が小村(小村徳男氏/17年間現役でプレーした元日本代表DF)みたいに3,000人のファンをスタジアムへ呼べるか?』と言われたことがあったんです。その時、私も若くその言葉にイラっとしてしまったのですが、サッカーってショービジネスであって選手も一商品じゃないですか。なので方法論はどうあれ、集客できることも選手としてひとつの価値なんだということが分かったんです。プレーで魅せられることに越したことはないんですよ、でも試合以外の時間の方が長い訳で、そこでファンの方やスポンサーさんが喜んでくれるのはどういうことなのか、当時言っていただいたあの言葉を胸に、行動するようにしています。毎回『ユニフォームちょうだい』というのに応えるのは、さすがに厳しいですけど(笑)」
――これからもタイで頑張っていかれるのでしょうか?
はい、そのつもりでいます。やっぱりタイが好きですからね。
◆プロフィール
樋口大輝(ひぐち・だいき)/1984年生まれ、熊本県八代市出身。学生時代九州大学サッカー雄、福岡大サッカー部に所属。日本で2007年にJFL所属だったガイナーレ鳥取で、2008年から佐川印刷SCでプレー。2011年、恩師ヴィタヤ・ラオハクルの誘いを受け、自身が監督を務めるタイ強豪・チョンブリFCへ移籍。2012年にウオチョン・ユナイテッドFC(現ソンクラー・ユナイテッドFC)で、2014年からタイ・ホンダ・ラックラバーンFCでプレー。2016年シーズンにYAMAHAリーグ・ディヴィジョン1(2部)を制し、来季TOYOTAタイリーグ(1部)へ昇格に貢献。サイドからの仕掛けを得意とする、闘志を内に秘めた九州男児である。
【ピースボールアクション】
開発途上国、被災地、紛争や革命が発生している国や地域、児童養護施設などで生活している子どもたちに、サッカーボールを通して『生きる希望や喜びを与えること』をミッションに世界平和に貢献しようとするボランティア団体。
https://www.facebook.com/peaceballactionthailand
はい、4月14日に1回目大きな地震があって、また16日の早朝に本震があって。「熊本で震度7」という報を見た時に正直覚悟しましたよ。両親へ連絡したら無事だと分かり安心したのですが、実は時を同じくして妻の出産も控えていたんです。そして16日の午前中に娘が産まれるというエピソードも重なって忘れられない日になりました。
正直いろいろと精神的に不安定な日が続いていたのですが、出産にも初めて立ち会えた激動の一日でした。ただその後も余震が続いていたじゃないですか。両親のことも心配だし、一度帰国しようかとも考えたのですが、現実的ではないなと。であれば、タイで自分にできることをやろうとの思いから、いろいろと考えて行動させてもらっています。近くに居る友人知人に相談を聞いてもらって、タイからも応援している人が多いことを形で表わしたくて。
――なるほど。クラブの母体であるタイ・ホンダにも掛け合い、工場内で義援金活動も行なったそうですね。
はい、多くのタイ・ホンダ社員の方々ら沢山の募金をいただきました。感謝で涙が自然と心の底から湧き出てきて、素直に嬉しかったです。リアルな話、彼らってそんなに多くの給与をもらっていないと思うんです。それでも熊本のために、日本ためにとみんなで協力してくれて。実は、熊本県菊池郡大津町に本田技研のバイク工場があって、研修で行ったことがあるタイ・ホンダのタイ人スタッフも多いんです。また2011年にタイ・ホンダ工場が洪水被害で大変な目に遭ったりしたこともあるんで、何かしなくてはとタンブン(お寺に寄進したり、恵まれないもを援助するような徳を積むことを行う仏教の教え)精神を働かせてくれたのだと理解しています。
――日本各地から世界へ広がりを見せている、社会貢献活動を行なうピースボールアクションタイランド代表幹事もされているそうです。どんな動機からだったのでしょうか?
私はここタイでプロサッカー選手になって、ご飯を食べられるようになったので、タイにすごく感謝しています。なので、いつかタイへ恩返しがしたいなという気持ちを持っていたなかで、日本発信のピースボールアクションの存在を知って興味を持ち、オフで日本へ一時帰国した際に、ピースボールアクションの代表をされている大阪成蹊大学の林恒宏先生のもとへ話を聞きに寄らせていただいたのがきっかけでした。2014年7月からタイで活動をさせていただいています。
――慈善活動やボランティアをやられていたり、またタイ在住の日本人の子どもたちへ積極的にサッカーを教えたりと、率先して奉仕活動を行なっているイメージが樋口選手には強いんです。
このタイという国で、皆に生かされて自分があることを日々感じています。これからもタイ社会に支えていただくと思いますし、感謝の気持ちを忘れてはダメだろうと。実は鳥取時代のエピソードなんですが、契約満了で退団する際に社長さんから『お前が小村(小村徳男氏/17年間現役でプレーした元日本代表DF)みたいに3,000人のファンをスタジアムへ呼べるか?』と言われたことがあったんです。その時、私も若くその言葉にイラっとしてしまったのですが、サッカーってショービジネスであって選手も一商品じゃないですか。なので方法論はどうあれ、集客できることも選手としてひとつの価値なんだということが分かったんです。プレーで魅せられることに越したことはないんですよ、でも試合以外の時間の方が長い訳で、そこでファンの方やスポンサーさんが喜んでくれるのはどういうことなのか、当時言っていただいたあの言葉を胸に、行動するようにしています。毎回『ユニフォームちょうだい』というのに応えるのは、さすがに厳しいですけど(笑)」
――これからもタイで頑張っていかれるのでしょうか?
はい、そのつもりでいます。やっぱりタイが好きですからね。
◆プロフィール
樋口大輝(ひぐち・だいき)/1984年生まれ、熊本県八代市出身。学生時代九州大学サッカー雄、福岡大サッカー部に所属。日本で2007年にJFL所属だったガイナーレ鳥取で、2008年から佐川印刷SCでプレー。2011年、恩師ヴィタヤ・ラオハクルの誘いを受け、自身が監督を務めるタイ強豪・チョンブリFCへ移籍。2012年にウオチョン・ユナイテッドFC(現ソンクラー・ユナイテッドFC)で、2014年からタイ・ホンダ・ラックラバーンFCでプレー。2016年シーズンにYAMAHAリーグ・ディヴィジョン1(2部)を制し、来季TOYOTAタイリーグ(1部)へ昇格に貢献。サイドからの仕掛けを得意とする、闘志を内に秘めた九州男児である。
【ピースボールアクション】
開発途上国、被災地、紛争や革命が発生している国や地域、児童養護施設などで生活している子どもたちに、サッカーボールを通して『生きる希望や喜びを与えること』をミッションに世界平和に貢献しようとするボランティア団体。
https://www.facebook.com/peaceballactionthailand