【育成年代の深層】ロクFCが掲げる普遍の哲学。結果至上の対極を行く”下手な子”ほどピッチに立てる大会とは?

カテゴリ:高校・ユース・その他

手嶋真彦

2016年07月20日

「下手の横好き」で何が悪いのか。サッカーの支持者を増やすには、上手いも下手も関係ないはずだ。

浅井が高く評価するのはマスチェラーノ(中央)の献身性。14年W杯の最優秀選手だったとも。(C)Getty Images

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 良い男を育てていきたい浅井にとって、サッカーは子どもたちがさまざまな経験を積むための手段でもある。多くを学べるのが、国外への遠征だ。浅井は中学生年代の教え子たちを連れて、ヨーロッパや南米などに何度も出向いている。
 
「英語を勉強しろと言ったって、なかなか聞きません。でも海外に行ってみたら、喋れたほうがいいって肌で感じるわけですよ。いろんなところに連れていきます。食事をするだけでも、テーブルマナーとか食器の使い方とか一目瞭然です」
 
 国外遠征中に親善試合が5試合あれば、全員1試合は先発させる。
 
「交代出場でベンチから出ていくのと、最初から整列して相手と握手してというのは違った経験です。贈り物の交換は、ベンチスタートじゃできません。サッカーは二の次でいいんです。早いうちから異文化に触れておく。子どもたちには、いろんな可能性があるんですから」
 
 浅井にとっての育成指導者とは、登山のガイド役でもあるのだろう。世の中にはいろんな山がある。子どもたちは好きなサッカーをきっかけにして、自分の山を選び、登っていけばいい。
 
 それなのにサッカーが下手というだけで、座っているしかできない子どもたちがいる。ユニホームを着ているのに弁当を食べて帰るだけという我が子を見て、胸を痛めない親がいるだろうか。育成現場にはびこる結果至上の弊害を、浅井は憂慮する。
 
「サッカーが上手けりゃ、なんでも許されちゃう。そんな感じのところが多いんです」
 
 試合に負ければ、結果だけで全否定する指導者もいるようだ。勝利のためだけにどやしつけられる上手な子、ベンチを温めるだけの下手な子。子どもたちがサッカーを嫌になれば、親だってこのスポーツが嫌いになるのではないか。愛好者の裾野が狭まれば、サッカーに対する社会の理解もなくなっていくだろう。育成年代の結果至上は逆効果ではないのか。
 
「もっと選択肢が増えたほうがいいんですけどね……。サッカーがずっと好きで、年を取っても続けてほしい。嫌いになられたら困りますよ」
 
 だからこそ浅井は、できるだけ多くの子どもをピッチに立たせようとする。その哲学の延長線上に、ダイヤモンドリーグの創設があるのだ。
 
 浅井が大会への参加を呼び掛けたのは近隣の育成クラブや中学校で、1年目の今シーズンはU―12、U―13、U―14と3つのカテゴリーで総当たりのリーグ戦を続けている。大会閉幕後は個人表彰の予定もある。表彰の目安はどれだけ活躍したかではない。どれだけ成長を遂げたかだ。
 
「ボールを蹴れない、止められない子が、どこまでできるようになっているか。人との競争じゃないんです」
 
 そう語る浅井の目の前では、ダイヤモンドリーグの試合が続いている。上手くはないかもしれないが、子どもたちは必死に戦っている。「下手の横好き」で何が悪いのか。サッカーの支持者を増やしていくためには、上手いも下手も関係ないはずだ。(文中敬称略)
 
取材・文:手嶋真彦(スポーツライター)

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