【育成年代の深層】ロクFCが掲げる普遍の哲学。結果至上の対極を行く”下手な子”ほどピッチに立てる大会とは?

カテゴリ:高校・ユース・その他

手嶋真彦

2016年07月20日

他のクラブには、弁当だけ食べて帰る子どもたちもいる。「私が親なら耐えられません」

これが天然芝のホームグラウンド。浅井の取り組みを支援する企業が無料提供してくれている。写真:手嶋真彦

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「サッカーにはサッカーのルールが、世の中には世の中のルールがある。それを教えるのが、こういうクラブの役目ですよ。それなのに、ろくに挨拶もできないとか、学校での態度が悪いとか、それで最終的には伸び悩んじゃう子どもがけっこう多い」
 
 幅を利かせているのが、浅井の目には未熟にしか映らない指導者だ。
 
「社会経験が浅いから、せいぜいサッカーしか教えられない。例えばドイツの育成指導者は、教育者以上に教育者という印象です。我々もそこに理想を求めていかないと」
 
 ある土曜日の夕方、グラウンドの浅井の下を、小学5年生の入団希望者が訪れた。それまで所属していたサッカー少年団を辞めてきたと言う。付き添いの両親に事情を聞くと、親子揃ってコーチへの信頼をなくしたようだった。指導者としての引き出しが少なく、依怙贔屓も酷いのだと訴えた。後日、浅井は教えてくれた。
 
「こういうケースが多いんですよ」
 
 試合にまったく出場できず、ロクFCに移籍してくる子どもたちもいる。浅井は眉をひそめた。
 
「せっかく週末のグラウンドに行っても、ただ座っているだけ。弁当だけ食べて帰るんです。ああいう子どもたちの姿を見ていると、可哀想ですよ。私が親なら耐えられません」
 
 浅井には娘がふたりいる。親の気持ちはよく分かる。
 
「弁当を食べて帰るだけじゃ、成長がないですよね。試合に出れば、失敗したって、その子はいろんな面で変わっていくでしょう。たとえ短い時間でもピッチに立てば、試合後の会話にだって加われます」
 
 入団希望の小学5年生も両親も初対面だったが、浅井はざっくばらんだ。独特の表現で指導方針を伝える。
 
「今はじゃんじゃん太っていいんです。贅肉はあとから落とせばいい」
 
 どういう意味の比喩なのか。
 
「食わず嫌いはやめて、いろんな経験をして、いろんな人と付き合ってみろ。それを肥やしにして、そのうちフィルターに掛ければいい。失敗したっていいんですよ。成功しようと思うと、どうしても小さくなっちゃいますから」
 
 手塩に掛けると、浅井は表現する。

「事細かにうるさいくらい言う。言葉のシャワーです。いずれ分かるから、それでいいんだと。育てるって、本当に我慢比べなんです。正直言えば、目を覆いたくなる子もいますよ。だけど、その子なりのところからやっていけば、少しずつボールに触れるようになる。それだけでも、子どもは喜びますからね。できない子をできるようにしていく楽しみって、やっぱりありますよ」
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