川崎の敵陣局面での攻撃
続いて川崎の攻撃面の特徴を見ていきましょう。レアンドロ・ダミアン選手を中心に見れば、なんといっても先述した通り、22点のうち7アシストを挙げた山根選手との関係性が注目されます。アシストのパターンとしては大きく分けて2つあります。家長選手とのコンビから外をグーっと上がっていきクロスを供給するパターン。それから、パス回しの中から低い位置でスルーパスを通したり、タイミングよくクサビを打ち込んでそのままL・ダミアン選手が抜け出していくパターンです。
面白いもので横浜は、この山根選手の動きを誰が見るのかというと、ポジション的には前田選手になる。山根選手のオーバーラップやインナーラップにどこまで前田選手がついていくのか。ここはひとつの見どころです。
面白いもので横浜は、この山根選手の動きを誰が見るのかというと、ポジション的には前田選手になる。山根選手のオーバーラップやインナーラップにどこまで前田選手がついていくのか。ここはひとつの見どころです。

Jリーグ優勝クラブで活動していたアナリストの第一任者杉崎健氏。
Twitter(https://twitter.com/suzakken)やオンラインサロン(https://community.camp-fire.jp/projects/view/356767)などでも活動中。
例えば、家長選手が図のように中に入ってきた場合、左サイドバックのティーラトン選手も付いていくような感じになると、その空いたエリアに山根選手が上がっていくでしょう。横浜は前節の神戸戦でも、ティーラトン選手の裏のスペースをかなり使われていた印象です。川崎とすれば、山根選手と家長選手が絡んで右サイドを崩していくのはいつも通りですが、いかに前田選手とティーラトン選手にポジショニングを迷わせながら裏を取るかがポイントになります。逆に横浜はこのエリアを機動力の高いボランチでカバーしたい。そうなると、扇原選手よりも渡辺選手が適任かもしれません。
一方L・ダミアン選手にフォーカスすると、まずは相手のセンターバックの前に入って、くさびを受けようとします。基本的にDFの前に入って背負った時には、相手にやらせないFWなので、これに対してチアゴ・マルチンス選手や岩田選手がどこまで挟み込んで抑えられるか。DFからすれば、いったんボールが収まると懐が深くて飛び込めないし、飛び込まないと前述した湘南戦のようにオーバーヘッドでゴールを狙ってきたりするので、非常に厄介な選手です。
それならばと、L・ダミアン選手に入るクサビのボールを奪いに行こうとすれば、スルーパスを通されて一発で裏をとられる危険性がある。こうした局面でのL・ダミアン選手と相手CBの駆け引きは注目です。ボールがどの位置にあっても、いま彼らが何をしているのかを見てみると面白いのではないでしょうか。
またL・ダミアン選手は右からのクロスを合わせるパターンが多いのですが、前節・G大阪戦で旗手選手が決めた2点目のように、右から大外へのクロスの“折り返し”を合わせるといった狙いも持てれば、左からのゴールの可能性も高まるでしょう。横浜は前節の神戸戦で、同じようなパターンで狙われていた面もあり、頻度は少なくとも効果的な狙いになるかもしれません。
川崎がどちらのサイドから攻撃するのか。カギを握るのは家長選手であることが多いのですが、後半戦を通じてアンカーの橘田選手の存在も大きくなっています。当初はインサイドハーフでの起用でしたが、ケガ人や移籍する選手も出てくる中でアンカー起用が増え、彼が中心となって左右へ展開するようにもなっています。そして橘田選手を助けるように、脇坂選手と旗手選手が相手のギャップに顔を出して、パスを受けてと繰り返す。この3人が非常にいい距離感で繋げている時は、崩しの部分でも違いを生み出せています。
前節のG大阪戦はシステム的に橘田選手にきっちりつく選手がいませんでしたが、今回の横浜戦はおそらくマルコス・ジュニオール選手あたりがしっかり見る構図になる。ここをどれだけ剥がし続けられるか。非常にプレスが強い相手ですし、そうしたなかで球際での勝負もシビアになる。橘田選手にとっては、アンカーとしての才能をどれだけ開花できるのか、今後の成長も含めて重要な試合になりそうです。
得点王争いに話を戻すと、お互いに特定のFWに点を獲らせるというサッカーはしないでしょう。あくまで、自分たちの形の中で最後の仕上げを彼らに任せるはずです。そうなると中盤の3対3の構図や、サイドの2対2の構図で、どちらが優位に立って自分たちのやりたいことを出せるのか。そこが得点王レースの分岐点となりそうです。
【著者プロフィール】
杉崎健(すぎざき・けん)/1983年6月9日、東京都生まれ。Jリーグの各クラブで分析を担当。2017年から2020年までは、横浜F・マリノスで、アンジェ・ポステコグルー監督のもとで、チームや対戦相手を分析するアナリストを務め、2019年にクラブの15年ぶりとなるJ1リーグ制覇にも大きく貢献。現在は「日本代表のW杯優勝をサポートする」という目標を定め、プロのサッカーアナリストとして活躍している。Twitterやオンラインサロンなどでも活動中。
◇主な来歴
ヴィッセル神戸:分析担当(2014~15年)
ベガルタ仙台:分析担当(2016年)
横浜F・マリノス:アナリスト(2017年~20年)
◇主な実績
2017年:天皇杯・準優勝
2018年:ルヴァンカップ・準優勝
2019年:J1リーグ優勝
一方L・ダミアン選手にフォーカスすると、まずは相手のセンターバックの前に入って、くさびを受けようとします。基本的にDFの前に入って背負った時には、相手にやらせないFWなので、これに対してチアゴ・マルチンス選手や岩田選手がどこまで挟み込んで抑えられるか。DFからすれば、いったんボールが収まると懐が深くて飛び込めないし、飛び込まないと前述した湘南戦のようにオーバーヘッドでゴールを狙ってきたりするので、非常に厄介な選手です。
それならばと、L・ダミアン選手に入るクサビのボールを奪いに行こうとすれば、スルーパスを通されて一発で裏をとられる危険性がある。こうした局面でのL・ダミアン選手と相手CBの駆け引きは注目です。ボールがどの位置にあっても、いま彼らが何をしているのかを見てみると面白いのではないでしょうか。
またL・ダミアン選手は右からのクロスを合わせるパターンが多いのですが、前節・G大阪戦で旗手選手が決めた2点目のように、右から大外へのクロスの“折り返し”を合わせるといった狙いも持てれば、左からのゴールの可能性も高まるでしょう。横浜は前節の神戸戦で、同じようなパターンで狙われていた面もあり、頻度は少なくとも効果的な狙いになるかもしれません。
川崎がどちらのサイドから攻撃するのか。カギを握るのは家長選手であることが多いのですが、後半戦を通じてアンカーの橘田選手の存在も大きくなっています。当初はインサイドハーフでの起用でしたが、ケガ人や移籍する選手も出てくる中でアンカー起用が増え、彼が中心となって左右へ展開するようにもなっています。そして橘田選手を助けるように、脇坂選手と旗手選手が相手のギャップに顔を出して、パスを受けてと繰り返す。この3人が非常にいい距離感で繋げている時は、崩しの部分でも違いを生み出せています。
前節のG大阪戦はシステム的に橘田選手にきっちりつく選手がいませんでしたが、今回の横浜戦はおそらくマルコス・ジュニオール選手あたりがしっかり見る構図になる。ここをどれだけ剥がし続けられるか。非常にプレスが強い相手ですし、そうしたなかで球際での勝負もシビアになる。橘田選手にとっては、アンカーとしての才能をどれだけ開花できるのか、今後の成長も含めて重要な試合になりそうです。
得点王争いに話を戻すと、お互いに特定のFWに点を獲らせるというサッカーはしないでしょう。あくまで、自分たちの形の中で最後の仕上げを彼らに任せるはずです。そうなると中盤の3対3の構図や、サイドの2対2の構図で、どちらが優位に立って自分たちのやりたいことを出せるのか。そこが得点王レースの分岐点となりそうです。
【著者プロフィール】
杉崎健(すぎざき・けん)/1983年6月9日、東京都生まれ。Jリーグの各クラブで分析を担当。2017年から2020年までは、横浜F・マリノスで、アンジェ・ポステコグルー監督のもとで、チームや対戦相手を分析するアナリストを務め、2019年にクラブの15年ぶりとなるJ1リーグ制覇にも大きく貢献。現在は「日本代表のW杯優勝をサポートする」という目標を定め、プロのサッカーアナリストとして活躍している。Twitterやオンラインサロンなどでも活動中。
◇主な来歴
ヴィッセル神戸:分析担当(2014~15年)
ベガルタ仙台:分析担当(2016年)
横浜F・マリノス:アナリスト(2017年~20年)
◇主な実績
2017年:天皇杯・準優勝
2018年:ルヴァンカップ・準優勝
2019年:J1リーグ優勝