振り返った“楽しさ”
「語弊があるかもしれないけど」。
そう前置きしたうえで、札幌との決勝戦を「楽しかった」と振り返る。
チームとしては5度目の決勝の舞台。ただスターティングメンバーに、中村の名前はなかった。大一番を前にしたトレーニングで「そういうことなんだろうな」とベンチスタートは覚悟していたという。しかし、「逆に落ち着けたのかも」と述懐する司令塔は、64分、1-1の状況でピッチへ送り出された。
背番号14の登場に呼応するかのようにゲームの流れはより激しさを増す。88分には同じく途中出場の小林悠が勝ち越し弾を決めるも、後半アディショナルタイムには、CKから札幌に同点に追い付かれた。
そして延長前半には、チャナティップのドリブル突破を自陣ゴール前で止めたCB谷口彰悟がVAR判定によって一発退場を命じられたのだ。そしてこのプレーで与えたFKを決められてしまう。
そう前置きしたうえで、札幌との決勝戦を「楽しかった」と振り返る。
チームとしては5度目の決勝の舞台。ただスターティングメンバーに、中村の名前はなかった。大一番を前にしたトレーニングで「そういうことなんだろうな」とベンチスタートは覚悟していたという。しかし、「逆に落ち着けたのかも」と述懐する司令塔は、64分、1-1の状況でピッチへ送り出された。
背番号14の登場に呼応するかのようにゲームの流れはより激しさを増す。88分には同じく途中出場の小林悠が勝ち越し弾を決めるも、後半アディショナルタイムには、CKから札幌に同点に追い付かれた。
そして延長前半には、チャナティップのドリブル突破を自陣ゴール前で止めたCB谷口彰悟がVAR判定によって一発退場を命じられたのだ。そしてこのプレーで与えたFKを決められてしまう。
10人で1点のビハインド。危機的状況に鬼木達監督はボランチの大島僚太を下げて、攻撃的SBのマギーニョを投入。大島に代わってチームの舵を握ったのが中村だった。
「自分の匙加減ですべてが決まる。最近はそういうコントロールは僚太に任せていたけど、相当にやり甲斐があった。ピッチ上の情報をすべて取り込んで、プレーをしていた。だから不謹慎と言われるかもしれないけど、サッカーの楽しさを改めて感じていた」
109分には中村のCKから小林の同点弾が生まれる。ただなによりも光ったのが、この男の真骨頂といえるチームの操舵術であり、10人になった川崎を陰で支え続けたのは紛れもなく背番号14だった。
その後のPK戦では3人目のキッカーを任され、見事に成功。「これまでの想いが凝縮されていた」というゲームを制し、満面の笑みでトロフィーを掲げた。
過去の大一番とは異なる生き生きとした姿。川崎の象徴が力を発揮したからこそ訪れた歓喜――もしかしたら初優勝の理由はそう説明できるのかもしれない。
1週間後のリーグ戦では左膝に重傷を負い、長期離脱を強いられるまさかの事態に見舞われた。それでも、これまで数々の苦難を乗り越えてきた男は、前を向く。
「この歳でこの怪我をする人はいないと思うので、戻れる姿を見せられるようやっていきたい。意味があるんだろうなと思います。この年齢で、この立場で怪我をしたことに意味があるんだろうなと。逆にこの怪我を乗り越えた時に、サッカー人生で経験することをほぼ“コンプリート”しているんだろうなと。そうやってポジティブに考えたい」
川崎のレジェンドの完全復活の瞬間には、ルヴァンカップの歓喜の優勝と同じように、新たなドラマが待っているのだろう。
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
「自分の匙加減ですべてが決まる。最近はそういうコントロールは僚太に任せていたけど、相当にやり甲斐があった。ピッチ上の情報をすべて取り込んで、プレーをしていた。だから不謹慎と言われるかもしれないけど、サッカーの楽しさを改めて感じていた」
109分には中村のCKから小林の同点弾が生まれる。ただなによりも光ったのが、この男の真骨頂といえるチームの操舵術であり、10人になった川崎を陰で支え続けたのは紛れもなく背番号14だった。
その後のPK戦では3人目のキッカーを任され、見事に成功。「これまでの想いが凝縮されていた」というゲームを制し、満面の笑みでトロフィーを掲げた。
過去の大一番とは異なる生き生きとした姿。川崎の象徴が力を発揮したからこそ訪れた歓喜――もしかしたら初優勝の理由はそう説明できるのかもしれない。
1週間後のリーグ戦では左膝に重傷を負い、長期離脱を強いられるまさかの事態に見舞われた。それでも、これまで数々の苦難を乗り越えてきた男は、前を向く。
「この歳でこの怪我をする人はいないと思うので、戻れる姿を見せられるようやっていきたい。意味があるんだろうなと思います。この年齢で、この立場で怪我をしたことに意味があるんだろうなと。逆にこの怪我を乗り越えた時に、サッカー人生で経験することをほぼ“コンプリート”しているんだろうなと。そうやってポジティブに考えたい」
川崎のレジェンドの完全復活の瞬間には、ルヴァンカップの歓喜の優勝と同じように、新たなドラマが待っているのだろう。
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)