劇的な川崎のルヴァン初制覇の舞台裏ストーリー。キーマン4人が抱えた秘めたる想い

カテゴリ:Jリーグ

本田健介(サッカーダイジェスト)

2020年04月27日

忘れられない一戦に

最終ラインを統率した谷口。しかし延長戦でアクシデントが…。(C)SOCCER DIGEST

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 札幌との決勝戦、誰よりも忘れられない試合となったのは、川崎の守備の要・谷口彰悟なのかもしれない。

 2-2で迎えた延長戦の96分、その瞬間は訪れた。自陣ゴール前で、札幌のアタッカー、チャナティップがドリブルで仕掛けてくる。その突破を谷口がペナルティエリアに入る前、間一髪のところで阻止した。しかし、甲高いホイッスルが鳴る。谷口のディフェンスがファウルを取られ、FKの判定となったのだ。

 プレーの正当性を説明するなか、信じられない出来事が続く。一連のプレーがVAR判定の対象となり、決定機の阻止として一発退場を命じられたのだ。

「難しい判定だったとは思いますが、納得できなかった」

 頭のなかには憤りと焦りの感情が駆け巡ったのだろう。常に冷静な男が一瞬、戸惑うような姿を見せた。しかし、ここからが谷口らしい対応だった。

「言いたいことは一杯ありましたが、どこかで覆らないなという考えも浮かびました。それでベンチを見たら監督がボードをいじっている。フォーメーションや配置などを変えるために指示が必要だと思ったんです」
 すると谷口は近くにいた登里享平に伝令係を頼み、自らは審判に判定の理由を訊きながら、ベンチから指示が届くまでの時間を作った。

 この一連の行動は、ある反省が活きていた。それは2度の警告でプロ人生初の退場になった同年のリーグ22節の名古屋戦の経験である。

「あの時は退場を命じられてから、ピッチから出るのが早かった感覚があったんです」

 その想いが行動として表われた。その後、谷口はロッカールームへ。しかし、直後のFKを札幌に決められ、勝ち越しを許してしまう。悔しさを抑えながらモニターでチームメイトの奮闘を見守った。

「(車屋)紳太郎がPKを外した時はもうやばいと思いましたよ」

 幼少期からともに熊本で過ごした後輩のPK失敗の瞬間には敗戦を覚悟したという。それでも前述のように新井の活躍もあってチームは見事に勝利。

 試合後には谷口は温かくチームメイトに迎えられた。
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