その優れたテクニックとダイナミズムを活かして、敵の「第1プレッシャーライン」の背後でフリーになって最終ラインにパスコースを提供すると、ワンタッチ、ツータッチでシンプルにボールを捌くことで、ポゼッションを安定させる。敵ゴールに背を向けている時には無理にターンせずワンタッチで最終ラインにボールを戻して動き直し、より良い角度でパスを引き出したり、あるいはマーカーを連れて動くことで前線への縦パスのコースを空けたりなど、間接的な形で局面を前に進める機能を果たして、チームアタックを円滑にしている。
一旦ボールを収めて攻撃のリズムや緩急をコントロールしたり、難易度の高いパスコースを選んで局面を一気に前に進めたりといったレジスタ的な仕事を果たすプレーは得意ではないものの、その分、守備の局面においては危険なスペースを埋め、あるいは困難に直面した味方をサポートすることでチーム全体のバランスを担保する、非常に重要な役割を担っている。
マンCが今夏にジョルジーニョ(ナポリ→チェルシー)の獲得に動いたのは、フェルナンジーニョのレジスタとしての機能性に全面的に満足しているわけではないからだろう。しかしフェルナンジーニョはその分守備の局面において、バランサーとして極めて大きな役割を果たしている。もちろん、攻撃の局面においてもビルドアップの潤滑剤としての役割は小さなものではない。総合的に見れば、現在のマンCにおいて最も「代えの利かない」プレーヤーの一人であることは間違いない。
分析:ロベルト・ロッシ
翻訳:片野道郎
●分析者プロフィール
ロベルト・ロッシ/1962年3月16日生まれのイタリア人監督。MFだった現役時代は、チェゼーナの育成部門でアリーゴ・サッキ(元イタリア代表監督)に、ヴェネツィアではアルベルト・ザッケローニ(元日本代表監督)に師事。99年に引退し、01~08年はラツィオやインテルなどでザッケローニのスタッフ(コーチ兼スカウト)を務める。その後は独り立ちして下部リーグの監督を歴任。16-17シーズンはスパルのU-19監督を務めた。現在はフリー。
