【探訪ストーリー】柿谷曜一朗――再出発の地、徳島

カテゴリ:日本代表

塚越 始(サッカーダイジェスト)

2014年05月30日

柿谷の人柄を物語るスパイクの使い方とうどん店のエピソード。

柿谷が徳島時代に通い詰めたという丸池製麺所は、開店早々から賑わう人気のうどん店だ。

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 クラブ内にもうひとり、徳島時代の知られざる一面を知る人物がいる。
 
「ほんっとに、礼儀正しい選手でしたよ」
 
 そう語気を強めるのは、徳島のマネジャー・佐野哲教だ。全選手のスパイクなど用具を管理する、まさに選手たちを足もとから支えるスタッフである。佐野も練習前などに柿谷と話をする機会がよくあった。
 
「曜一朗は正真正銘のサッカー小僧でした」
 
 佐野はそう強調する。サッカー選手の唯一無二の武器と言えるスパイクだが、柿谷のそれには特徴があった。スパイクのアウトソールは市販のものではなく、彼の気に入っている以前のモデルのものをナイキ社に特注して取り付けてもらっていたという。
 
「そのスパイクを一足ずつ曜一朗は大切に扱っていたんです。新しいモデルが出たからと言ってすぐには変えたがらなかった」
 
 しかも試合後、彼のスパイクはほとんど傷んでいなかった。「つま先の部分が剥がれることもなかった。蹴るべきところを、しっかり使えていたんだと思います。だから長く使えていたんでしょうね」と佐野は言い、そんな「戦友」のスパイクとの付き合い方から、柿谷のサッカーに対する誠実な想いを感じ取っていた。
 
「だから僕の目から見れば、物を大切にする、本物のサッカー小僧でした。スパイクの使い方を見るだけで、サッカーがすごく好きなのが伝わってきました。悪ガキだなんて、微塵も感じませんでしたよ」
 
 ピッチから少し離れたところで柿谷の成長を感じていたのが、行きつけのうどん店『丸池製麺所』の店主・山本将弘だ。
 
「柿谷選手が『年に200日は来てるわぁ』と言われているぐらい、ほとんど毎日お会いしていましたよ(笑)」
 
 営業時間は午前11時からわずか3時間で、手づくりの麺がなくなり次第閉店する。午後1時過ぎには売り切れることもある人気店だ。
 
 柿谷が初めて来店した際に注文したのが、かま玉だった。窯で麺を茹で上げるため、「7分待ちになります」と山本が伝えたところ、柿谷はそれだけで機嫌を損ねて店を出て行ってしまったそうだ。
 
 だがその後、再び濱田らに連れられて訪れ、今度はすぐに食べられる『ぶっかけ』を注文。するとその味に惚れ込み、週に3日、4日と、常連として店に姿を現わすようになった。
 
 いつしか「柿谷専用メニュー」もできた。冷やしの『ぶっかけ』に温泉卵をつけ、すだちを少しかけたもので、それを柿谷は「いつもの!」と注文した。これは今も徳島のサポーターの間で、『柿谷くんのスペシャル』という裏メニューとして知られる。
 
 店主の山本は微笑む。
 
「大きな声で『ごちそうさま』、『また来るよ』と言ってもらえると嬉しかったですよ。最初の頃とは見違えるぐらい人が変わり、とても魅力的な人になっちゃって。このお店は開店から7年が経つんですが、ちょうど柿谷選手と一緒に成長させてもらってきたようにも思います」
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