就任会見で語ったコーチ転身の一番の理由は?
結局現役最後の試合となった昨季最終節ホームゲームは、11月半ばだというのに雪が舞い、前半途中から本降りになった。みるみるうちに白く覆われていくピッチにカラーボールが投入され、2009年J1・2節のホーム開幕戦の記憶が蘇る。あの日もこんな雪の中、オレンジのボールを蹴っていた。
石川がクラブに残した足跡を思い出せと言わんばかりの雪は、指揮官の「キックのいい選手がピッチにいたほうがいい」との判断を引き出す雪でもあった。おそらく予定より早い54分に途中出場した石川は、ラストゲームの感慨も高揚も見せることなく、いつもどおり冷静にピッチを広く見てパスを出し、一蹴りでゴールへの空気感を作るプレースキックを見せてくれた。試合は「今日(のモチベーション)はタツさん。それだけ」と言ってはばからない後輩たちの奮闘で4-1と快勝。結果的に、笑顔で聞いたあの長いホイッスルが、現役生活にピリオドを打つ笛になった。
1月11日に行なわれた現役引退・コーチ就任会見では、その選択に至った一番の理由は「やりがい」だと答えている。
「どういうところでやるのが自分にとって一番刺激になるか、モチベーションになるかを考えた時に、コーチとしてやっていくのが一番楽しみで頑張れると感じたので、決めました」
どちらかと言えば職人気質で、言葉より背中で語るタイプに見えた石川は、実は本人曰く「教えたがり」だという。彼の経験、技術、サッカーへの情熱も含めたすべてが山形の選手たちに継承されて行くなら、もう少しプレーを見たかった一ファンとして、この引退に諦めもつく。
石川がプロ入りした2002年の鹿島のイヤーブックには、初々しい写真とともに、ルーキーのこんな抱負が語られている。
「どのプレーも一定のレベルはクリアしたうえで、ひとつでいいから売り物のプレーを持ちたい。“アイツのあのプレーが見たいから、スタジアムに行くんだ“とサポーターにいわれるような」
望んだとおりの選手になって16年を駆け抜け、石川は現役生活を終えた。1月16日からは、山形の長いキャンプがスタート。クレバーで努力家の新人コーチが、新しい一歩を踏み出した。
取材・文●頼野亜唯子(フリーライター)
石川がクラブに残した足跡を思い出せと言わんばかりの雪は、指揮官の「キックのいい選手がピッチにいたほうがいい」との判断を引き出す雪でもあった。おそらく予定より早い54分に途中出場した石川は、ラストゲームの感慨も高揚も見せることなく、いつもどおり冷静にピッチを広く見てパスを出し、一蹴りでゴールへの空気感を作るプレースキックを見せてくれた。試合は「今日(のモチベーション)はタツさん。それだけ」と言ってはばからない後輩たちの奮闘で4-1と快勝。結果的に、笑顔で聞いたあの長いホイッスルが、現役生活にピリオドを打つ笛になった。
1月11日に行なわれた現役引退・コーチ就任会見では、その選択に至った一番の理由は「やりがい」だと答えている。
「どういうところでやるのが自分にとって一番刺激になるか、モチベーションになるかを考えた時に、コーチとしてやっていくのが一番楽しみで頑張れると感じたので、決めました」
どちらかと言えば職人気質で、言葉より背中で語るタイプに見えた石川は、実は本人曰く「教えたがり」だという。彼の経験、技術、サッカーへの情熱も含めたすべてが山形の選手たちに継承されて行くなら、もう少しプレーを見たかった一ファンとして、この引退に諦めもつく。
石川がプロ入りした2002年の鹿島のイヤーブックには、初々しい写真とともに、ルーキーのこんな抱負が語られている。
「どのプレーも一定のレベルはクリアしたうえで、ひとつでいいから売り物のプレーを持ちたい。“アイツのあのプレーが見たいから、スタジアムに行くんだ“とサポーターにいわれるような」
望んだとおりの選手になって16年を駆け抜け、石川は現役生活を終えた。1月16日からは、山形の長いキャンプがスタート。クレバーで努力家の新人コーチが、新しい一歩を踏み出した。
取材・文●頼野亜唯子(フリーライター)