【黄金世代】第5回・本山雅志「ワールドユース、ナイジェリアの風を切り裂く」(♯3)

カテゴリ:Jリーグ

川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

2017年12月01日

僕って不思議と、負けて悔しい想いをした試合のほうが覚えてるんですよ

1997年10月のカット。互いを認め合い、互いを高め合った黄金世代。彼らはただのエリート集団ではなかった。写真:佐藤香織

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 話を続けてもらおう。
 
「相手にも恵まれて決勝まで行ったけど、スコアはボロ負け(0-4)でしたね。でも僕は言うほど、コテンパンにやられた印象はなくて、チャンスは作れてたと思う。ホント、決定力の差だと思うし、こっちの点の取られ方が悪かったのはあるけど、それを含めてあっちのクオリティーが高かった。シャビは本当に巧かったですよ」
 
 本山は小野とともに、FIFA(国際サッカー連盟)が選ぶ大会ベストイレブンに名を連ねた。それ自体は「数少ない僕の個人賞ですからね。ありがたかった」と振り返るが、準優勝という結果には悔しさを滲ませる。
 
「やっぱ負けて終わってるんでね、そこはそうですよ。負けていい試合なんてない。僕って不思議と、勝って優勝したとかって試合より、負けて悔しい想いをした試合のほうが覚えてるんですよ。サンドニでフランス代表に叩きのめされた試合は、ベンチにいて出れなかったけど悔しかったし、カシマでローマに0-3でボコられたり。それから2002年の(ワールドカップの)前にアルゼンチンがJヴィレッジで合宿してて、鹿島と練習試合をしたんですよね。前半0-0で、後半1点取ったらそっから6点ぶち込まれて(笑)。あれも悔しかった」
 
 世界大会で銀メダルを獲得しても、満足感はまるでなかったという。
 
「みんなそうだったと思う。20の世代が終わったな、これからはJリーグで結果出さなきゃなってみんなが思ってたはずですよ。チームとしてよく戦えたと思うし、個人で見てもシンジやタカとかと一緒にやって、世界の同世代とも十分渡り合えるんだなって感じたけど、大きななにかを得たというのはなかったかもしれない。いまでもファンの方によく覚えてもらってるのは嬉しいんだけど、悔しさが残る大会だったからか、そんな感じなんですよね」
 
 あまり覚えていないと本人は言ったが、スイッチを押したらご覧のとおり。18年前の記憶を紐解く本山の表情を見ながら、こちらの脳裏にも、あの煮えたぎるような興奮が蘇った。観ている誰もがワクワクした。ナイジェリアのピッチで美しく舞った、あの背番号10の圧倒的なプレゼンスを──。
 
<♯4につづく>
 
取材・文●川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)
 
※次回は、栄光に彩られた鹿島アントラーズでの日々に迫ります。伝説の同期入団6人組、常勝軍団でのレギュラー争い、突如襲った難病との闘い、そして訪れた決断のとき……。どうぞご期待ください!
 
【本山雅志PHOTO】稀代のドリブラーのキャリアを厳選フォトで 1995-2017
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PROFILE
もとやま・まさし/1979年6月20日生まれ、福岡市北九州市出身。3つ上の兄の影響でサッカーを始め、地元の二島小、二島中でアタッカーとしての才能を育まれる。高校は名門・東福岡へ。1年時はボランチで選手権ベスト4、3年時にはナンバー10を背負って伝説の3冠を達成した。ユース代表でも攻撃の中枢を担い、98年アジアユースで得点王を獲得。鹿島アントラーズ入団2年目の1999年、ナイジェリア・ワールドユースでは自慢のドリブルを炸裂させ、U-20日本代表の準優勝に貢献、大会ベスト11に選出された。2000年のシドニー五輪にも出場。鹿島では5度のJ1リーグ優勝を含む14個のタイトルを獲得。17年間在籍し、13年間に渡って背番号10を着けた。そして2016年、生まれ故郷を本拠地とするギラヴァンツ北九州に移籍し、現在に至る。00年6月のボリビア戦でA代表デビュー。W杯出場は果たせなかったが、04年アジアカップ、05年コンフェデ杯などで存在を誇示した。日本代表通算/28試合出場・0得点。Jリーグ通算/405試合・38得点(J1は365試合・38得点)。175センチ・65キロ。A型。データはすべて2017年11月30日現在。
 
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