【黄金世代】第5回・本山雅志「ワールドユース、ナイジェリアの風を切り裂く」(♯3)

カテゴリ:Jリーグ

川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

2017年12月01日

Jヴィレッジの周りをずーっと、練習が終わるまで走らされました

立ち上げから解散まで丸3年間、ユース代表では常にナンバー10を担った。やはりもっともしっくりくる番号だ。(C)SOCCER DIGEST

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 当時のユース代表には、恒例のショータイムがあった。それは知るひとぞ知る格別の代物で、練習がはじまる直前に開演される。毎度毎度、それが楽しみでしょうがなかった。
 
 ダブル主演は、シンジ&モトだ。このふたりの天才テクニシャンは決まってコンビを組み、リフティングのパス交換をしていた。兎にも角にも、思わずスタンディングオベーションをしたくなるほど娯楽性に富んでいたのだ。毎回「これできる?」とどちらかが新技を披露すると、相棒はすぐさま呼応し、3回目、4回目くらいでマスターしてしまう。黄金世代の仲間たちでさえ食い入るように見ている。その極上の空間に割って入る者は、誰ひとりとしていなかった。同じ周波数を持つ者同士だけが通じ合える、テレパシーのようなもの。まさに「お金を払ってでも見たいエンターテインメント」で、その後の五輪代表やA代表でも拝ませてもらった。
 
「ああ、やってたやってた。べつにいつも決めてたわけじゃないけど、自然とシンジとボールを蹴ることが多かったですね。『これできるようになったんだよね』っていうと、シンジなんかあっさりできちゃうわけですよ。逆の立場の僕はちょっと時間かかりましたけど、シンジは速攻で。もうね、シンジのボールコントロールを観ているだけで楽しかったですから」
 
 そして本山は、“名パートナー”の衝撃の技巧を目の当たりにするのだ。
 
「あ、そう言えば一度、シンジが遅れてチームに合流した時があって、『俺は今日練習しないから』って、キーパーたちのとこに行くわけですよ。それで南(雄太)とかとパントキックを競ってやるんだけど、その精度がヤバイ(笑)。バチーンって蹴って狙った通りのとこに行くんだから。おふざけなんだけど、うへーって感じ。もうそんなことでも、こっちにはどんどん刺激になって入ってくる。ホント、同じ時間を過ごせて幸せだった」
 
 1998年のアジアユースで日本は準優勝。大会で韓国に二度負けたことについては、「さすがに悔しかったからそれだけは忘れてない」と話す。その一方で、決勝の夜にそのライバル国の選手たちと親交を深めたのは、最高の思い出だと言い切る。
 
「大会中はずっと同じホテルだった。ほとんど交流とかしてなかったし、あの何時間か前まですごいライバル心を燃やして戦ってたんだけど、シンジがイ・ドングか誰かに話しかけて、そっから一気に打ち解けた。なんかすごく貴重な時間を過ごしてるな俺たち、って実感がありましたよ。そのあとも何人かの韓国人選手とは交流があって、イ・ドングがACLで鹿嶋に来た時は、ミツオと一緒にご飯行ったりしましたから。負け方は酷かったけど、良いこともあった大会ですね」
 
 タイのチェンマイから帰国してまもなくだった。本山は五輪代表に招集され、フィリップ・トルシエとの初体面を果たす。訳が分からないまま標的にされ、踏んだり蹴ったりの合宿初日だったという。
 
「正直、どんなひとなのかまったく分からなかったじゃないですか。で、いきなり怒鳴られたんですよ。もうびっくり。やっぱり五輪代表だから僕より年上が多いわけで、当然先輩だから、“さんづけ”で呼んでた。したら、『なんでそんな呼び方をするんだ。サッカーに関係ないだろっ!』って。え~、俺だけ~って感じですよ。いま思えば、そういう考え方を浸透させたくて、突っつきやすい僕とかに目を付けたんでしょうね。『お前はもういい、走ってろ!』と言われて、Jヴィレッジの周りをずーっと、練習が終わるまで走らされました。あの合宿の初日、ボール蹴ってませんから(笑)」
 
 それでも本山は、以降も“さんづけ”をやめなかったという。「反抗とかそういうんじゃなくて、ついつい出ちゃうんですよ。でも気づいたら言われなくなってました。途中で諦めたんじゃないですかね」と笑みを浮かべる。やがていつも同部屋だった小笠原が狙う撃ちされるようになり、「やられたねー今日も。まあまあ」と励まし、親友の心のケアを忘れなかった。

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