新監督の下、セリエBでの再スタートを見据えた土台固めへ。
後任監督候補としては、様々な名前が挙がった。
ポゼッション志向の攻撃的なスタイルで知られるファビオ・リベラーニ(元ジェノア、パレルモ、レイトン・オリエント)、手堅いスタイルで残留争いのエキスパートとして知られるルイジ・デ・カーニオ(元シエナ、ウディネーゼなど)、ペスカーラを率いて結果を残した経験を持つデリオ・ロッシ(元ラツィオ、フィオレンティーナなど)、イボ・イアコーニ(元ブレッシア、クレモネーゼなど)……。
しかし、セバスティアーニ会長が望んだのは、11-12シーズンのセリエBに旋風を巻き起こし、ペスカーラに近年では最高のシーズンとともに20年ぶりのセリエA昇格をもたらした攻撃サッカーの権化にして名伯楽、ゼーマンだった。
15日昼、セバスティアーニ会長はローマまでゼーマンを訪ねて昼食を共にし、来シーズン末までの1年半の契約を前提にした話し合いを持つ。しかし、当初の感触は、良いものではなかった。
同日夕方、マスコミの取材に答えた会長は「一番最初に会ったのは彼だが、あくまで未来を見据えた話し合いだった。今すぐに就任するという選択肢は外していい。現在のチームは、彼には向いていない。ザウリが今シーズン末まで指揮を執る可能性もある」と語っている。
しかし、その言葉とは裏腹にセバスティアーニ会長は諦めることなく説得を続け、翌16日午前中には、ゼーマンもそれを受け入れるかたちで監督就任に同意。18年まで1年半の契約を交わした。
ゼーマンは、就任記者会見で次のように語っている。
「オファーを受けたのは、このプロジェクトを信じていること。そして、ペスカーラの人々に幾ばくかの借りがあることだ。5年前(昇格の後)に去ったことは後悔していない。ローマからのオファーには、誰もノーとは言えないだろう」
「ペスカーラが今、最下位だとすれば、それは何かしらの限界があるからだ。できるだけ早くそれを乗り越えたい。ブザマな姿は見せたくない。私がここに来たのは、人々を楽しませるチームを築くためである。まずは、選手を見極めるところから始めたい」
すでに事実上降格が決まっている以上、フォーカスすべきはセリエBから再スタートする来シーズン。いずれにしても、現有戦力のほとんどはレンタルであり、来シーズンは改めて一からチームを構築する必要がある。
今シーズンの残り14試合は、誇りと意地を見せ、胸を張って戦い抜くことだけに専念しつつ、来シーズンを戦うチームの土台を固めるというアプローチが、ペスカーラにとっても、ゼーマン新監督も、選び得る最もベターな選択なのかもしれない。
文:片野道郎
【著者プロフィール】
1962年生まれ、宮城県仙台市出身。1995年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中だ。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させている。『ワールドサッカーダイジェスト』誌では現役監督とのコラボレーションによる戦術解説や選手分析が好評を博す。ジョバンニ・ビオ氏との共著『元ACミラン専門コーチのセットプレー最先端理論』が2017年2月に刊行された。
ポゼッション志向の攻撃的なスタイルで知られるファビオ・リベラーニ(元ジェノア、パレルモ、レイトン・オリエント)、手堅いスタイルで残留争いのエキスパートとして知られるルイジ・デ・カーニオ(元シエナ、ウディネーゼなど)、ペスカーラを率いて結果を残した経験を持つデリオ・ロッシ(元ラツィオ、フィオレンティーナなど)、イボ・イアコーニ(元ブレッシア、クレモネーゼなど)……。
しかし、セバスティアーニ会長が望んだのは、11-12シーズンのセリエBに旋風を巻き起こし、ペスカーラに近年では最高のシーズンとともに20年ぶりのセリエA昇格をもたらした攻撃サッカーの権化にして名伯楽、ゼーマンだった。
15日昼、セバスティアーニ会長はローマまでゼーマンを訪ねて昼食を共にし、来シーズン末までの1年半の契約を前提にした話し合いを持つ。しかし、当初の感触は、良いものではなかった。
同日夕方、マスコミの取材に答えた会長は「一番最初に会ったのは彼だが、あくまで未来を見据えた話し合いだった。今すぐに就任するという選択肢は外していい。現在のチームは、彼には向いていない。ザウリが今シーズン末まで指揮を執る可能性もある」と語っている。
しかし、その言葉とは裏腹にセバスティアーニ会長は諦めることなく説得を続け、翌16日午前中には、ゼーマンもそれを受け入れるかたちで監督就任に同意。18年まで1年半の契約を交わした。
ゼーマンは、就任記者会見で次のように語っている。
「オファーを受けたのは、このプロジェクトを信じていること。そして、ペスカーラの人々に幾ばくかの借りがあることだ。5年前(昇格の後)に去ったことは後悔していない。ローマからのオファーには、誰もノーとは言えないだろう」
「ペスカーラが今、最下位だとすれば、それは何かしらの限界があるからだ。できるだけ早くそれを乗り越えたい。ブザマな姿は見せたくない。私がここに来たのは、人々を楽しませるチームを築くためである。まずは、選手を見極めるところから始めたい」
すでに事実上降格が決まっている以上、フォーカスすべきはセリエBから再スタートする来シーズン。いずれにしても、現有戦力のほとんどはレンタルであり、来シーズンは改めて一からチームを構築する必要がある。
今シーズンの残り14試合は、誇りと意地を見せ、胸を張って戦い抜くことだけに専念しつつ、来シーズンを戦うチームの土台を固めるというアプローチが、ペスカーラにとっても、ゼーマン新監督も、選び得る最もベターな選択なのかもしれない。
文:片野道郎
【著者プロフィール】
1962年生まれ、宮城県仙台市出身。1995年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中だ。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させている。『ワールドサッカーダイジェスト』誌では現役監督とのコラボレーションによる戦術解説や選手分析が好評を博す。ジョバンニ・ビオ氏との共著『元ACミラン専門コーチのセットプレー最先端理論』が2017年2月に刊行された。