未勝利のまま監督交代のペスカーラ…セリエAと下部リーグを往復するクラブの特殊な事情

カテゴリ:連載・コラム

片野道郎

2017年02月18日

攻撃スタイルを貫いた前指揮官を会長も必死に慰留したが…。

現役時代はミランやラツィオでプレーして欧州王者となり、イタリア代表としても世界王者の一員となった前任のオッド監督。やっているサッカーは決して悪くはなかったが、悪い流れを断ち切ることができなかった。 (C) Getty Images

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 14-15シーズン終盤、バローニの解任に伴ってプリマベーラ(U-19)監督から内部昇格したオッドも、就任以来、ワンタッチ、ツータッチの速いパス回しでチーム全体を押し上げた。
 
 彼の下、ペスカーラはオフ・ザ・ボールの走り込みを多用したダイナミックなコンビネーションでフィニッシュを狙う、攻撃的かつコレクティブなスタイルをブレることなく貫いてきたのだ。
 
 昨シーズン、そのスタイルでセリエBを席巻して4位となり、プレーオフ経由で昇格を勝ち取った。しかし、対戦相手のほとんどが格上となるセリエAでは、そう簡単には勝たせてもらえない。
 
 主導権を握って試合を進めながらも、ビルドアップ時のパスミスや中盤での不用意なボールロストからカウンターを喰らうというパターンで失点、敗れるというパターンを繰り返してきた。
 
「内容は悪くなかった。このサッカーを続けていけば、結果も自然とついてくる」というオッド監督の発言とは裏腹に、チームは徐々に自らのスタイルに対する自信と確信を失っていくという結果になった。
 
 開幕から一度も勝ち星を挙げることなく、シーズンが折り返し点にも達しない時点ですでに事実上降格が決まるという流れのなかにあっては、もはや不可能な残留を目指してジタバタするより、来シーズンを視野に入れつつ戦う方が建設的、という考え方も十分に成り立つ。
 
 実際、セバスティアーニ会長は、来シーズンも引き続きオッドにチームを委ねるという意向の下、監督交代の可能性を常に否定し続けてきた。
 
 しかし、23節のラツィオ戦で6失点、続く先週末のトリノ戦でも5失点と、残留への希望どころか、誇りすら失ってしまったかのようなパフォーマンスをチームが見せるに至って、オッドは自ら身を引くことを決意する。
 
 試合の終盤、気が緩んだトリノから3点を奪ってひとかけらの意地を示したとはいえ、オッドの決意は変わらなかった。
 
 辞任の意思を伝えられたセバスティアーニ会長は当初、この申し出を拒否してオッドを引き留めようと試みた。試合翌日(月曜日)の夕方には、ルカ・レオーネSDとともにチーム内で話し合いを持った末、「オッドへの信頼は変わらない」と留任をアナウンスする。
 
 しかし、その翌日、オッドと改めて話し合いを持ったセバスティアーニ会長は、辞任を受け入れるのではなく、クラブの側から解任するというかたちで、監督交代に踏み切ることになった。
 
 クラブは、「話し合いと省察を重ねた結果、不本意ながらオッド監督を解任するという決断に至った。この監督交代によって、選手たちがさらにその責任を自覚し、最近のようなパフォーマンスを二度と繰り返さないことを願うものである」との声明を出した。
 
 次の指揮官が決まるまでの暫定監督をルチャーノ・ザウリが務めることも併せて発表。39歳のザウリは、アタランタ、ラツィオなどでプレーした後、現役最後のシーズンを当時セリエBのペスカーラで過ごし、引退後は育成部門を経てトップチームのコーチを務めていた。
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