湘南前社長の大倉智が立ち上げた新クラブ。「いわきFC」が提唱するサッカーの本当の価値とは?

カテゴリ:Jリーグ

手嶋真彦

2016年07月21日

プロスポーツの産業化へ。感動の共有をテコにする。

Jリーグ草創期の柏レイソルで異彩を放っていた頃の大倉。泥臭く戦い続けるCFだった。(C)SOCCER DIGEST

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「感動をありがとう」は、大倉には最高の褒め言葉のひとつだ。しかし、感動の提供自体が、いわきFCの取り組みのゴールではない。大倉には確信がある。なんのためのプロスポーツなのか――。その問い掛けに対する答を持っているのだ。
 
「最も重要なプロスポーツの本質って、実は雇用を創出するとか、内需を拡大するとか、そういう経済活動にあるんです。プロスポーツで稼いで、貯め込まずに、再投資する。未来のある子どもたちのためのスポーツ環境を整備したり、苦労している指導者たちの待遇改善に使うんです」
 
 そうした産業化が叶うのであれば、J3でもJFLでも東北1部リーグでも構わないというのが大倉の考えだ。昇格や優勝といった結果ではなく、感動の共有というプロセスをテコにして、こうした価値観を体現していこうとしている本格的な試みは、日本のプロサッカー界では過去に例がないだろう。感動は目的であり、同時に手段でもあるのだ。
 
「普段はバラバラでも、いわきFCを応援している時だけはみんなが一緒になれる。感動を分かち合えるって、人間が生きていくうえですごく大切じゃないですか。欧米のカルチャーを見ても、すべてが日本に合うとは思わないけど、スポーツの良さっていうのは小さな地域やエリアで発揮するものですからね」
 
 クラブが掲げている「いわき市を東北一の都市に」というスローガンは、こう言い換えられるのではないだろうか。いわき市を東北一の〝幸せな〞都市に――。
 
「スポーツにはそういう力がある、J1に行くのがすべてじゃないって分かってくれば、投資してくれる企業も増えるでしょう。産業化が進めば市が潤っていくだろうし、小学校にクーラーがつくかもしれない」
 
 大倉には、そうした価値観を外に広めていくビジョンもある。いわきFCやいわき市をモデルとしたカルチャーのいわば伝播だ。
 
「例えばスタジアムビジネスです。人口35万人のいわき市で、5万人のスタジアムがいつも満員になる。地域が盛り上がるそういうモデルケースができれば、次から次へと波及していくかもしれない。いずれは日本全体に……。何年かかるのかは、分かりませんけど」
 
 立派なスタジアムを構えたとしても、肝心なのはサッカーだ。だからこそ大倉は内容にこだわる。バレエやミュージカルと違って、スポーツは筋書きや結末がコントロールできない。だからこそプロセスにこだわり抜く。大切なのはどう勝つかであり、どう負けるかだ。
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