1986年――堅固な守備で代表チームとともに世界制覇を達成。
リーベルと日本の初めての邂逅は1986年。この年は夏にメキシコでワールドカップが開催され、ディエゴ・マラドーナ擁するアルゼンチン代表が2度目の世界制覇を成し遂げていた。
この余勢を駆ってかどうかは定かではないが、クラブレベルでもアルゼンチンは躍進を見せた。
GKネリー・プンピード、CBオスカール・ルジェリ、MFエクトル・エンリケといった世界王者の一員を擁するリーベルは、リベルタドーレス・カップの決勝戦でアメリカ・で・カリを下し、初の南米王座を獲得した。
トヨタカップでの彼らの対戦相手は、ルーマニアのステアウア・ブカレスト。チャンピオンズ・カップ(当時)決勝でバルセロナと対戦し、不利を予想されながらも堅固な守備で粘り、PK戦ではGKヘルムート・ドゥカダムが4人ストップという神懸かり的なプレーを見せて、予想外の初優勝を飾った。
アルゼンチン・サッカーといえば攻撃のイメージがあるが、リーベルの強さの源は堅固な守備。世界王者の守護神がゴールを守り、ルジェリとネルソン・グティエレスのCBコンビは世界最強の呼び声が高かった。そしてSBホルヘ・ゴルディーリョ、中盤のアメリコ・ガジェゴも守備意識の高い、堅実な選手だった。
一方のステアウアは、戦前から不利を予想されていた。奇跡の守護神ドゥカダム、そしてルーマニア代表でも司令塔を務めるラスロ・ベレーニの中心選手2人が、負傷欠場を余儀なくされたからだ。
手堅い内容の試合は28分、リーベルが一瞬の隙を突いて先制点を奪った。FKの場面、中盤の司令塔でリーベルのアイドルだったノルベルト・アロンソが素早く前方に蹴ると、ボールは気を抜いていたステアウアDF陣の合間を抜けて、ただひとりゴール前に走り込んでいたFWアントニオ・アルサメンディに渡った。
シュートはポストに跳ね返されるも、ボールはGKドゥミトル・スティンガチュの身体に当たって再びアルサメンディの目前に浮き上がる。これを、抜け目のないウルグアイ代表ストライカーは難なく頭で押し込んだ。
以降、残り時間はかなりあったものの、リーベルはカウンターサッカーに移行。自慢の守備力を前面に押し出してステアウアのスピーディーな攻撃を封じ、余裕を持って最少リードを守りきってしまった。
試合巧者ぶりを存分に発揮し、初の世界王者に輝いたリーベル。現時点ではこれが、唯一にして最後の世界タイトルである。
MVPは決勝点のアルサメンディ。しかし試合前は、もうひとりのFWで、アルゼンチン期待のストライカーといわれたファン・フネスの方が注目を集めていた。
「バッファロー」「熊」「ランボー」などのあだ名をつけられていたこの迫力のあるストライカーは、翌年には自国開催のコパ・アメリカにも出場するなど成長を続けていたが、90年に心臓病に罹り、間もなくして引退。そして92年1月11日、5度目の心臓手術を受けた後に容態が悪化し、28年間の短い生涯を閉じた。
【写真で振り返る】86年トヨタカップ
◎1986年トヨタカップ
86年12月14日・国立競技場
リーベル・プレート 1-0 ステアウア・ブカレスト
得点:アルサメンディ(28分)
◇リーベル
出場メンバー:GKプンピード、DFゴルディージョ、グティエレス、ルジェリ、モンテネグロ、MFエンリケ、ガジェゴ、アルファロ(68分スペラディオ)、アロンソ、FWアルサメンディ、フネス
監督:ヴェイラ
◇ステアウア
出場メンバー:GKスティンガチュ、DFヨバン、ベロデディチ、ブンベスク、ヴェイセンバッハー、MFバルブレスク(60分マイェアル)、ストイカ、バラン、バリント、FWラカトシュ、ピトゥルカ
監督:ヨルダネスク
この余勢を駆ってかどうかは定かではないが、クラブレベルでもアルゼンチンは躍進を見せた。
GKネリー・プンピード、CBオスカール・ルジェリ、MFエクトル・エンリケといった世界王者の一員を擁するリーベルは、リベルタドーレス・カップの決勝戦でアメリカ・で・カリを下し、初の南米王座を獲得した。
トヨタカップでの彼らの対戦相手は、ルーマニアのステアウア・ブカレスト。チャンピオンズ・カップ(当時)決勝でバルセロナと対戦し、不利を予想されながらも堅固な守備で粘り、PK戦ではGKヘルムート・ドゥカダムが4人ストップという神懸かり的なプレーを見せて、予想外の初優勝を飾った。
アルゼンチン・サッカーといえば攻撃のイメージがあるが、リーベルの強さの源は堅固な守備。世界王者の守護神がゴールを守り、ルジェリとネルソン・グティエレスのCBコンビは世界最強の呼び声が高かった。そしてSBホルヘ・ゴルディーリョ、中盤のアメリコ・ガジェゴも守備意識の高い、堅実な選手だった。
一方のステアウアは、戦前から不利を予想されていた。奇跡の守護神ドゥカダム、そしてルーマニア代表でも司令塔を務めるラスロ・ベレーニの中心選手2人が、負傷欠場を余儀なくされたからだ。
手堅い内容の試合は28分、リーベルが一瞬の隙を突いて先制点を奪った。FKの場面、中盤の司令塔でリーベルのアイドルだったノルベルト・アロンソが素早く前方に蹴ると、ボールは気を抜いていたステアウアDF陣の合間を抜けて、ただひとりゴール前に走り込んでいたFWアントニオ・アルサメンディに渡った。
シュートはポストに跳ね返されるも、ボールはGKドゥミトル・スティンガチュの身体に当たって再びアルサメンディの目前に浮き上がる。これを、抜け目のないウルグアイ代表ストライカーは難なく頭で押し込んだ。
以降、残り時間はかなりあったものの、リーベルはカウンターサッカーに移行。自慢の守備力を前面に押し出してステアウアのスピーディーな攻撃を封じ、余裕を持って最少リードを守りきってしまった。
試合巧者ぶりを存分に発揮し、初の世界王者に輝いたリーベル。現時点ではこれが、唯一にして最後の世界タイトルである。
MVPは決勝点のアルサメンディ。しかし試合前は、もうひとりのFWで、アルゼンチン期待のストライカーといわれたファン・フネスの方が注目を集めていた。
「バッファロー」「熊」「ランボー」などのあだ名をつけられていたこの迫力のあるストライカーは、翌年には自国開催のコパ・アメリカにも出場するなど成長を続けていたが、90年に心臓病に罹り、間もなくして引退。そして92年1月11日、5度目の心臓手術を受けた後に容態が悪化し、28年間の短い生涯を閉じた。
【写真で振り返る】86年トヨタカップ
◎1986年トヨタカップ
86年12月14日・国立競技場
リーベル・プレート 1-0 ステアウア・ブカレスト
得点:アルサメンディ(28分)
◇リーベル
出場メンバー:GKプンピード、DFゴルディージョ、グティエレス、ルジェリ、モンテネグロ、MFエンリケ、ガジェゴ、アルファロ(68分スペラディオ)、アロンソ、FWアルサメンディ、フネス
監督:ヴェイラ
◇ステアウア
出場メンバー:GKスティンガチュ、DFヨバン、ベロデディチ、ブンベスク、ヴェイセンバッハー、MFバルブレスク(60分マイェアル)、ストイカ、バラン、バリント、FWラカトシュ、ピトゥルカ
監督:ヨルダネスク

ゴールはなかったものの、力強い突破を見せたフネス。リーベル、ミジョナリオス(コロンビア)と所属したクラブで貴重なゴールを挙げた彼は、英雄として、今もサポーターの記憶のなかで生き続けている。 (C) SOCCER DIGEST