「試合に出られない現実と理由から完全に目を背けていた」立ち直れた理由は?
宏武が高2の時、桐生一は群馬県1部リーグで低迷し、プリンスリーグ参入プレーオフまで進むことができなかった。だが、高3になるとチームは県リーグで上位をキープし、プリンス参入プレーオフに進出。そこで2勝をして、チームを初のプリンス関東に昇格させたのだった。その恩恵を受ける形で弟は県リーグよりもはるかに注目度が高まるプリンス関東でプレーし、未来を掴み取った。
「いいよな、渉たちは…」
もちろん弟を含めた後輩たちのためにプリンス昇格のために全力を尽くした。その自負はある。だが、受け入れたくない現実を突きつけられて、素直になれなかったのも当然のことだった。
袋小路に追い詰められた気がした。右を見ても、左を見ても壁ばかり。だが、そこで彼が俯くことなく先を見据えられたのも、前を走る弟の存在があったからだ。
渉が簡単にプロになったわけじゃない。渉自身も1学年下の若月大和(現シオン)の成長で、一時期はレギュラーの座を譲るなど苦しい時期を過ごしたことは知っている。それでも必死で自分を磨いて、自らのプロ入りを手にしただけでなく、チームをプリンス残留に導いた。それにもし自分がプリンスに出ていたとしても、弟と同じような結果を残せていた保証は当然ない。
「何やってんだよ、俺は」。
ここで彼は今の自分の形成に繋がる大切なものを再発見することができた。それこそ自分は自分であり、それ以上でもそれ以外でもないということだ。
「ちょうど僕が大学サッカーでうまく行っていない時期だったので、正直それを渉のせいにして逃げてしまっていたことに気付いたんです。ただ単に自分の実力が足りないだけなのに、うじうじしていて、自分が試合に出られない現実と理由から完全に目を背けてしまっていた。そんな自分にだんだん腹が立ってきたし、それにプロに入ってなかなか試合に出られず、苦労している渉の姿を見たら、やっぱり尊敬というか、本当に渉から『お前は何やってんだよ、宏武!』と言われた気がして、奮い立つことができたんです」
「あいつはいいな」という気持ちがいかに邪(よこしま)で、自分の成長にも歯止めをかけてしまっているのかということに気づいた。同時に「渉には渉の武器があって、俺は俺の武器がある。そこを認識しないといけないと思った」と自分を見つめ直し、さらに「まずは周りどうこうではなく自分が立正大で試合に出るために努力するしかないと思った」ことで彼の未来は一気に切り開かれたのだ。
もちろん弟を含めた後輩たちのためにプリンス昇格のために全力を尽くした。その自負はある。だが、受け入れたくない現実を突きつけられて、素直になれなかったのも当然のことだった。
袋小路に追い詰められた気がした。右を見ても、左を見ても壁ばかり。だが、そこで彼が俯くことなく先を見据えられたのも、前を走る弟の存在があったからだ。
渉が簡単にプロになったわけじゃない。渉自身も1学年下の若月大和(現シオン)の成長で、一時期はレギュラーの座を譲るなど苦しい時期を過ごしたことは知っている。それでも必死で自分を磨いて、自らのプロ入りを手にしただけでなく、チームをプリンス残留に導いた。それにもし自分がプリンスに出ていたとしても、弟と同じような結果を残せていた保証は当然ない。
「何やってんだよ、俺は」。
ここで彼は今の自分の形成に繋がる大切なものを再発見することができた。それこそ自分は自分であり、それ以上でもそれ以外でもないということだ。
「ちょうど僕が大学サッカーでうまく行っていない時期だったので、正直それを渉のせいにして逃げてしまっていたことに気付いたんです。ただ単に自分の実力が足りないだけなのに、うじうじしていて、自分が試合に出られない現実と理由から完全に目を背けてしまっていた。そんな自分にだんだん腹が立ってきたし、それにプロに入ってなかなか試合に出られず、苦労している渉の姿を見たら、やっぱり尊敬というか、本当に渉から『お前は何やってんだよ、宏武!』と言われた気がして、奮い立つことができたんです」
「あいつはいいな」という気持ちがいかに邪(よこしま)で、自分の成長にも歯止めをかけてしまっているのかということに気づいた。同時に「渉には渉の武器があって、俺は俺の武器がある。そこを認識しないといけないと思った」と自分を見つめ直し、さらに「まずは周りどうこうではなく自分が立正大で試合に出るために努力するしかないと思った」ことで彼の未来は一気に切り開かれたのだ。