天才プレーヤーは短命か? Jの歴史などから読み解くジーニアスが生きる道

カテゴリ:Jリーグ

加部 究

2021年06月11日

一芸に秀でるだけでは不十分。晩年のロナウジーニョも…

20歳の時の大怪我でピーク期間を縮めてしまった小野だが、卓越した技術は健在。トラップひとつで客を呼べる真のスーパースターだ。写真:徳原隆元

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 本来天賦の才とは、持って生まれたものを指す。しかしそれも賢く磨く術を持たなければ、世に出すことはできない。実際来日したジーコは、自他ともに厳しい姿勢を貫いた。それが習慣となり伝統に変わり、他のクラブに先駆けて鹿島はプロの礎を築いた。

 今振り返ると、いかにも天才の日本型変異種と言えるのが中田英寿だったのだと思う。中田を天才と見る人は少ないかもしれない。サッカーのセンス、技術、フィジカルなど個別要素を検証すれば、あまり突出したものはない。

 だが極東の島国で育った少年が、際立って早くから欧州でプレーする将来設計を描き、成就するために徹底して無駄を排して努力をし続けた。その賢さと意思の強さは、他に類を見ない。93年に自国開催のU-17ワールドカップで日本代表の10番を背負い、当時は天才の呼び声を独占した財前宣之との対比が面白い。

「生意気盛りだったガキの頃は、頑張って走っているヤツらを見ながら、いやいやサッカーはテクニックだから、と思っていました。でも身体能力のある選手にテクニックがついたら強いんですよね」(財前)

 技術の精度や創造性で勝る財前は、攻撃のリーダーだった。しかし中田は、欧州で戦うことを想定して、国内でも出番確保優先で最初の一歩(ベルマーレ平塚)を刻み、技術、フィジカル、それに語学も含めてトータルに肉付けしていった。

 彼は29歳でスパイクを脱いでしまうのだが、裏返せば29歳までにすべてをやり尽くしたという見方も出来る。限界の見極め方も含めて早熟で賢明だった。

 ただし中田は自ら29歳で見切りをつけたが、基本的にフットボーラーは才能の大きさに比例して長寿を築く傾向にある。小野は20歳の時の大怪我でピーク期間を縮めてしまったが、40歳を過ぎてもプロとしての需要がある。

 また中村憲剛のように、40歳まで全盛に近い能力を発揮し続けたケースもある。中村俊輔や遠藤保仁らも合わせて共通項は、サッカー小僧のまま楽しめていることだ。「好きこそものの上手なれ」と言う。夢中になれることが彼らの最大の武器になり、スピードダウンを技術や駆け引きで埋めているのだ。

 しかしこうしてサッカーのフィジカル化が進む時代に生まれた天才は、もはや一芸に秀でるだけでは不十分だ。快足の前田大然が何度もスプリントをする持久性も兼備して評価を高めているように、本来相反する能力を研磨していく必要もある。

 多彩なマジックを持つロナウジーニョでも、晩年は「もっと走れよ」と野次られた。これから育って来る「次世代のメッシ」は、守備へのタスクも免除されないだろう。特徴を活かしながら、弱点も見せない。おそらく完璧に近いアスリート能力を基盤に、創意や技術で違いを見せられる選手だけが、天才との賞賛を継続できる。

 プレーを愛し、人一倍の勝者のメンタリティを有し、そのためにはなにより効率を追求しなければならない。頂点近くまで極めていくには、当然総合的なサポートが要る。

 現代の天才たちには、薬物に走ったり、酒におぼれていたりする暇はなさそうである。(文中敬称略)

文●加部 究(スポーツライター)

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