【連載】識者同士のプレミア放談「ジェラードが遺したもの――」

カテゴリ:ワールド

田邊雅之

2015年05月15日

大衆のハートにアピールした必死さ。

ジェラードとの別れを惜しむ識者2人のトークは、イングランド代表での想い出話にまで及んだ。 (C) Getty Images

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田邊:日本ではほとんど報道されなかったんですけど、イングランド代表のキャプテン問題って結構、やっかいなんですよね。南アフリカ・ワールドカップの頃は、ジェラードとテリーのどちらがチームを仕切るかで、かなり揉めたりしたわけで。
 
 ベッカムとの比較に話を戻すと、ファンの間でジェラードの代表キャプテン就任待望論が強かったのは十分に理解できる。どちらも必死にプレーするけど、ジェラードの方がより大衆のハートにアピールするじゃないですか。
 
山中:そう。ジェラードの方が必死にプレーしている感が伝わりやすい。まず攻撃で言えば、もちろんベッカムのフリーキックは代表の必殺技になっていましたけど、オープンプレーからの展開では、ジェラードの方がなんとかしてくれるんじゃないかなという期待感が高かった。
 
 地味な試合ですけど、ウェンブリーで2010年にやったハンガリー戦のプレーは、いまも強烈に覚えています。オウンゴールでリードされたのに、すぐにジェラードが強烈なミドルと、強引なボールの押し込みで逆転している。監督だったカペッロが、柄にもなくハイタッチをしてベンチに迎えていました。
 
田邊:存在感の大きさは守備も同じで。ジェラードというと、ミドルシュートや大胆なサイドチェンジに象徴される攻撃の印象が強いけど、守備に回った時の爆発的なダッシュも凄く迫力があった。多分、歴代のイングランド人選手の中でも、走る姿だけで金が稼げた数少ない人間だと思うんですよ。
 
 2006年ドイツ・ワールドカップのパラグアイ戦あたりはわかりやすくて。はっきり言って凡戦なんだけど、ジェラードが死ぬ気で自陣にまで戻ってくるシーンは隠れた見所でした。ちなみにこのドイツ大会で、イングランド代表の中で一番気を吐いたのもジェラードだった。
 
山中:ええ。しかもジェラードの場合は、試合が始まってあまり時間が経っていない時から必死の形相でプレーし始めるじゃないですか。時間はあるんだから、本当ならそこまで必死にならなくてもいいのに、いきなり眉間に皺を寄せ始めて。あの辺がまた、見る人の心をくすぐるんですよ。
 
田邊:イングランド代表は守備が緩いから、余計に見せ場は多くなる(笑)。で、それだけ必死にやっているのにタイトルに届かなかったから、余計にシンパシーが集まると。
 
山中:ジェラードの人気は全国規模だけど、同情寄りなんですよね。
 
田邊:陰と陽じゃないけど、彼はどこかで影を引きずっていたようなところがあって。最近では可もなく不可もない「平均的タイプ」の選手が増えているだけに、キャラの濃さでも存在感は際立っていた。
 
山中:たしかに。個性的で、しかも実力がある選手がいなくなるという点では、ひとつの時代が終わった感じがしますね。ランパードがアメリカに行った時に以上に、プレミアから去ってしまうのは惜しい。
 
田邊:ランパードと違ってプレミアに戻ってくる可能性は低いんだから、チェルシーファンも、もう少し温かく迎えてあげればよかったんじゃないですか?
 
山中:一応モウリーニョは、「イングランドでは、彼が『Dear Enemy』(親愛なる好敵手)だ」という表現で敬意を払ってましたから。
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