イングランド流「フットボーラー」の最後の世代。
田邊:あれだけの選手なのに、結局、プレミアのタイトルには届きませんでしたね。
山中:国内ではウリエ時代の2000-01シーズンにFAカップとリーグカップを取ったのと、05-06シーズンにもう一度FAカップを制したぐらい。
田邊:00-01シーズンというのは、コミュニティシールドとUEFAカップ、UEFAスーパーカップでも勝って、5冠王者とか言っていた頃。ところがそこから意外に伸び悩んだ。
山中:そう。イングランド人の感覚からすれば、まさかリーグ優勝を1回も経験しないまま、プレミアを後にするとは思っていなかったでしょう。昨シーズンを別にすれば、タイトルを争ったような展開自体が少なかった。
『テレグラフ』のヘンリー(ウィンター記者)に原稿を依頼した時も、「(ジェラードが)プレミア無冠で終わるなんて考えたことすらなかった」と言っていました。自伝を代筆した仲でもあるし、「考えたくなかった」というのが本音なんでしょうけど。
田邊:あとはベニテス時代の08-09シーズンに、マンチェスター・ユナイテッドと争ったケースくらいかな。
山中:ベニテスがファーガソンにマインドゲームを仕掛けたんですよね?
田邊:そう。いわゆる「ラファの“口撃”」。でもあの時も、最終的にはリバプール側がプレッシャーに押しつぶされてしまった苦い経験がある。
山中:04-05シーズン、劇的なCL優勝を飾ったという巨大な「絆創膏」はあるにしても、プレミアで勝てなかった心の傷は覆いきれないんでしょうね。
田邊:と思います。この辺の感覚は日本人には掴みにくいと思うんだけど、CLというのは基本的に外国での戦いなわけで。いかにビッグなタイトルであっても、やはり地元(国内)では、俺たちがナンバーワンなんだと言いたいんですよ。
山中:ましてやジェラードは、リバプールに対する思い入れが強い。彼の少年時代は、それこそリバプールがイングランドサッカーの顔役だった時代ですから。
田邊:そういうクラブのイメージも含めてなんですが、ジェラードはプレースタイル的にも、イングランド流「フットボーラー」の最後の世代だというイメージが強い。山中さんの印象は?
山中:僕もそう思いますね。まずプレースタイルで言うと、この国の人間が大好きなボックス・トゥ・ボックス型MFの極みだし、ミドルシュートなんかも凄まじいじゃないですか。
さっき話題に出た05-06シーズンのFAカップ決勝なんかは「ジェラード・ファイナル」(ジェラードのための決勝戦)と言われたぐらいで。映画の「少林サッカー」に出てくるような、嘘みたいに強烈なミドルをウェストハム相手に炸裂させていた。
田邊:芝生や選手、審判やゴールポストまで宙に巻き上げながら飛んでいくキャノンシュート(笑)。あの試合は、忘れようにも忘れられないですよ。こっちはジェラードにしてやられた側ですから(苦笑)。
山中:真面目な話、かつてのプレミアでは豪快なミドルが見所のひとつだったんだけど、ああいうシュートを打てる選手自体が減ってきていますね。
田邊:いまの選手でいうとジョンジュ・シェルビー(スウォンジー)くらい。
山中:でもシェルビーの場合は、ミドルといってもボレーしかできない。
田邊:一時期リバプールにいたけど、ジェラードの後継者にはなれなかったし、イングランド代表でもブレイクしなかった。現在のリバプールだとヘンダーソンが後釜候補になるんでしょうけど、ジェラードが抜けた穴を埋めるのはきつい。その点では、先週、話題に出たチェルシーのテリー問題に近いものがある。
山中:テリーの場合は、ピッチ上でも欠かせない存在になっているから、モウリーニョはブレンダン・ロジャース以上に難題を抱えているとも言えますね。
でも後継者探しという点では、イングランド代表も相当に大変。例えばチーム全体を精神的に引っ張っていくという点では、ベッカムがキャプテンになった頃から、ジェラードの方が適任だという声が強かったぐらいで。
山中:国内ではウリエ時代の2000-01シーズンにFAカップとリーグカップを取ったのと、05-06シーズンにもう一度FAカップを制したぐらい。
田邊:00-01シーズンというのは、コミュニティシールドとUEFAカップ、UEFAスーパーカップでも勝って、5冠王者とか言っていた頃。ところがそこから意外に伸び悩んだ。
山中:そう。イングランド人の感覚からすれば、まさかリーグ優勝を1回も経験しないまま、プレミアを後にするとは思っていなかったでしょう。昨シーズンを別にすれば、タイトルを争ったような展開自体が少なかった。
『テレグラフ』のヘンリー(ウィンター記者)に原稿を依頼した時も、「(ジェラードが)プレミア無冠で終わるなんて考えたことすらなかった」と言っていました。自伝を代筆した仲でもあるし、「考えたくなかった」というのが本音なんでしょうけど。
田邊:あとはベニテス時代の08-09シーズンに、マンチェスター・ユナイテッドと争ったケースくらいかな。
山中:ベニテスがファーガソンにマインドゲームを仕掛けたんですよね?
田邊:そう。いわゆる「ラファの“口撃”」。でもあの時も、最終的にはリバプール側がプレッシャーに押しつぶされてしまった苦い経験がある。
山中:04-05シーズン、劇的なCL優勝を飾ったという巨大な「絆創膏」はあるにしても、プレミアで勝てなかった心の傷は覆いきれないんでしょうね。
田邊:と思います。この辺の感覚は日本人には掴みにくいと思うんだけど、CLというのは基本的に外国での戦いなわけで。いかにビッグなタイトルであっても、やはり地元(国内)では、俺たちがナンバーワンなんだと言いたいんですよ。
山中:ましてやジェラードは、リバプールに対する思い入れが強い。彼の少年時代は、それこそリバプールがイングランドサッカーの顔役だった時代ですから。
田邊:そういうクラブのイメージも含めてなんですが、ジェラードはプレースタイル的にも、イングランド流「フットボーラー」の最後の世代だというイメージが強い。山中さんの印象は?
山中:僕もそう思いますね。まずプレースタイルで言うと、この国の人間が大好きなボックス・トゥ・ボックス型MFの極みだし、ミドルシュートなんかも凄まじいじゃないですか。
さっき話題に出た05-06シーズンのFAカップ決勝なんかは「ジェラード・ファイナル」(ジェラードのための決勝戦)と言われたぐらいで。映画の「少林サッカー」に出てくるような、嘘みたいに強烈なミドルをウェストハム相手に炸裂させていた。
田邊:芝生や選手、審判やゴールポストまで宙に巻き上げながら飛んでいくキャノンシュート(笑)。あの試合は、忘れようにも忘れられないですよ。こっちはジェラードにしてやられた側ですから(苦笑)。
山中:真面目な話、かつてのプレミアでは豪快なミドルが見所のひとつだったんだけど、ああいうシュートを打てる選手自体が減ってきていますね。
田邊:いまの選手でいうとジョンジュ・シェルビー(スウォンジー)くらい。
山中:でもシェルビーの場合は、ミドルといってもボレーしかできない。
田邊:一時期リバプールにいたけど、ジェラードの後継者にはなれなかったし、イングランド代表でもブレイクしなかった。現在のリバプールだとヘンダーソンが後釜候補になるんでしょうけど、ジェラードが抜けた穴を埋めるのはきつい。その点では、先週、話題に出たチェルシーのテリー問題に近いものがある。
山中:テリーの場合は、ピッチ上でも欠かせない存在になっているから、モウリーニョはブレンダン・ロジャース以上に難題を抱えているとも言えますね。
でも後継者探しという点では、イングランド代表も相当に大変。例えばチーム全体を精神的に引っ張っていくという点では、ベッカムがキャプテンになった頃から、ジェラードの方が適任だという声が強かったぐらいで。