――飛び出してきたGKをあざ笑うかのような華麗なループシュートでした。ああいうプレーを見ると、まだまだできるのではと感じてしまいます。いろんな方に言われたでしょうけど。
「みんなに言われましたね。あのゴールもそうだし、引退を発表してからコンディションが上がって結果が出始めたので、余計にみんなから『辞めるの早いだろ』『全然できるじゃん』って(笑)。でも自分の中ではスッキリしていたので」
――引退セレモニーで奥さんとお子さんが花束を持って出てきてくれた時、どんな心境でしたか?
「僕ひとりでは12年間も長くプレーできなかったはずですし、家族の支えがあって、ここまで来られました。最後ああいうふうに家族が花束を渡してくれて、すごく有難かったです」
「10年は苦しみを味わいながらも、充実していた」
――さて、ここからは印象に残っているシーズンを3つ伺っていきます。1つ目は?
「2010年。ヴェルディからレイソルに移籍した1年目で、色んな想いを抱えていた年です。その前年は大卒1年目でヴェルディで結構試合に出させてもらっていて、そこからレイソルに移籍しました。レイソルは当時J1からJ2に落ちてしまったチームでしたけど、当時のメンツは本当に凄くて。この年は確か2敗しかしていないんですよ。断トツのJ2優勝でした。
僕自身、古巣のヴェルディ戦で移籍後初ゴールを決めて、シーズンを通してだと24試合に出場して10点。二桁を達成できました。一時期は出場機会を失ったけど、練習が終わってから布部(陽功)コーチ(現ゼネラルマネージャー)と一緒にトレーニングをして、また夏頃にチャンスをもらって。そこで2点すぐに決めて、それからは試合に出続けられた。すごく充実した1年でした」
――柏では11年にJ1優勝も経験しましたね。
「はい。11年にはクラブ・ワールドカップに出場できましたけど、でも僕個人の充実度で言えば、10年のほうが試合に出ていましたから、そっちのほうが印象深いです。サッカー選手としては、自分が試合に出ていなかったら、やっぱり嬉しさよりも悔しさのほうが勝ってしまう。
その意味で10年は苦しみも味わいながら、だけどそこで自分でチャンスを勝ち取ってモノにしたという流れがあったので、すごく良い1年でした」